不況厄災下でのドラゴンクエスト6の発売と、混淆する新旧交代

~ドラゴンクエスト4コママンガ劇場シリーズ (3) ©1990~ (スクウェアエニックス/旧エニックス)~

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 9 ―――― 進む人事刷新と、ギャグ王創刊

▼1994年3月30日に、月刊少年ギャグ王(後のGagOh!:1994~1999)が創刊され、ドラクエ4コママンガも1Pコミック劇場の創設によって4コママンガクラブ(エニックス党)の活躍の場が大いに広まることとなる。長期にわたって巻頭カラーを占めてきた、すずや那智特別顧問も、この号をして巻頭の座を後身に譲渡。世代交代を思っていた石田和明氏と、魔法陣グルグル等の連載を抱える衛藤ヒロユキ氏などの実力派作家が離党し、ドラクエ4コママンガ劇場は名実共に生え抜きのエニックス党出身作家による世代交代が急速に進められた。結果、新山たかし氏が代表格、牧野博幸氏が党幹事長格として以後の4コママンガ劇場を支えてゆく体制となるに至り、この後1年余という短期間の活躍に留まった三剣もとか氏、ルドマンネタが際立った成田美穂氏、クリフト×アリーナネタを始めとして斬新な絵柄とノリが定評だった川本祐太郎氏などが初見。後にこの巻から代表編集長を務める、保坂嘉弘氏のエニックス離脱・新会社設立に同調し、突然の離党を表明する浅野りん氏も初登場するが、浅野氏は当初から4コママンガ劇場への掲載について余り熱心な様子ではなかったことを匂わせる楽屋裏での発言だった。

第9巻連名

  • すずや 那智
  • 新山 たかし
  • 牧野 博幸
  • 石田 和明
  • 成田 美穂
  • 野国 由紀
  • きりえ れいこ
  • 三剣 もとか
  • 田村 きいろ
  • タイジャン ホクト
  • 池野 カエル
  • 栗本 和博
  • 浅野 りん
  • 夜麻 みゆき
  • 川本 祐太郎
  • 衛藤 ヒロユキ
推定党役職
  • 永世代表 栗本 和博
  • 特別顧問 すずや 那智
  • 代表 新山 たかし
  • 代表代行 田村 きいろ
  • 副代表 夜麻 みゆき
  • 幹事長 牧野 博幸
  • 広報会長 池野 カエル
  • 懇親会長 タイジャン ホクト
  • 幹事長代理 川本 祐太郎
  • 組織委員長 きりえ れいこ
  • 読対委員長 三剣 もとか
  • 女性室長 浅野 りん
■ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 第9巻 前巻から9ヶ月後。細川連立政権が事実上崩壊する1週間前の1994年4月2日初版発行。この頃になると、元勲であるすずや那智氏、新山たかし氏、4コマクラブ(エニックス党)のホープ・牧野博幸氏による巻頭独占が目につくようになる。浅野・三剣・川本らの純粋エニックス党若手の登場が盛ん。代わりに世代交代を仄めかしてきた石田和明氏、ガンガンで多忙化の衛藤ヒロユキ氏が離党する。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 10 ―――― すずや氏退任とホープ幸宮氏の登場

▼阪神・淡路大震災、オウム真理教によるサリン地下鉄テロなど、災厄の年となった1995年。この年の末にはドラゴンクエスト史上最も印象の薄い作品として名を残すことになるドラゴンクエストVI・幻の大地の発売を控えるのだが、その話題に触れているのは越後屋サイバン氏だけという、これもまたずいぶんと寂しい状況下にあったことをうかがわせる。
その10巻だが、すずや那智氏の退任を持って、栗本和博党首を除き、創刊から第5巻までの実力派作家は全て退任することになった。柴田氏離脱後に4コマの核になる作家の存在が危ぶまれたが、牧野博幸氏が良く奮闘している状況を垣間見ることが出来る。新山たかし氏においては茶化してはいるようだが、編集部との確執を匂わせる発言を楽屋裏で発している。新山氏との溝を埋めるためとの憶測だが、浅野りん氏の巻頭起用を見るに、浅野氏に対する編集執行部の期待感は相当なものだったと見て間違いがない。浅野氏の盟友で結果的に仕事上の立場で分裂することになり、統合と再編の狭間にあってエニックス党を離れることがなかった幸宮チノ氏が初見の回。ヒット作・天空物語の布石を敷き始めることになる。

第10巻連名

  • 牧野 博幸
  • 新山 たかし
  • 三剣 もとか
  • 浅野 りん
  • 梶原 あや
  • 夜麻 みゆき
  • きりえ れいこ
  • 越後屋 サイバン
  • 田村 きいろ
  • 栗本 和博
  • 池野 カエル
  • 幸宮 チノ
  • すずや 那智
推定党役職
  • 永世代表 栗本 和博
  • 特別顧問 すずや 那智
  • 代表 新山 たかし
  • 代表代行 田村 きいろ
  • 副代表 夜麻 みゆき
  • 幹事長 牧野 博幸
  • 広報会長 池野 カエル
  • 懇親会長 梶原 あや
  • 幹事長代理 三剣 もとか
  • 組織委員長 きりえ れいこ
  • 読対委員長 幸宮 チノ
  • 女性室長 浅野 りん
■ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 第10巻 阪神・淡路大震災の記憶が新しい1995年1月17日。奇しくもその二日前に初版発行。被災者の中にはこの10巻をご覧になった人もいるだろう。長年4コママンガ劇場を支えてきたすずや那智氏が4コマ本編を退任することになる。一方で急成長株の浅野りん氏が巻頭の座につくなど、期待の大きさをうかがえた。また夜麻みゆき氏もガンガン系での連載枠維持のために離党を余儀なくする。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 11 ―― 実力派・村上ゆみ子氏とエニックス党全盛期

▼ガンガンやギャグ王を始めとして、エニックス出版界にも生え抜きの作家の発掘に傾注する保坂氏の手法が徐々に結実してゆく。世代交代を急速に進め、保坂派の確立に腐心した結果、奇しくもエニックス党全盛期とも言える作家によって固められた第11巻の連名となった。保坂氏は派閥結成を水面下で推し進める一方で、エニックス党出身作家の取り込みを目算。ガンガン系出身作家の箱田真紀氏を代表格として、結果的には多くの作家がエニックス党を離党、マックガーデンへと移籍してゆくのだが、保坂氏の目論見は浅野氏が早々の離脱宣言をし、一応の成功を見ることにはなるのだが、根幹的にエニックスを揺さぶるまでには至らなかった。幸宮氏の残留と、牧野氏の逡巡。三剣氏の引退が待ち受けていたからと見る。
後にスクエニイラストレーターの旗手となる村上ゆみ子氏の登場はドラクエ4コママンガ劇場、ひいてはドラクエ全域におけるルネッサンス的存在であったことは否めない。

第11巻連名

  • 牧野 博幸
  • 新山 たかし
  • 浅野 りん
  • 幸宮 チノ
  • 池野 カエル
  • 村上 ゆみ子
  • 夜麻 みゆき
  • 坂本 太郎
  • ちるみる
  • 梶原 あや
  • 藤田 佳子
  • 白井 寛
  • 曾我 晃生
  • ふじい たかし
  • 川本 祐太郎
  • 魔神 ぐり子
  • 栗本 和博
推定党役職
  • 永世代表 栗本 和博
  • 特別顧問 すずや 那智
  • 代表 新山 たかし
  • 代表代行 田村 きいろ
  • 副代表 夜麻 みゆき
  • 幹事長 牧野 博幸
  • 広報会長 池野 カエル
  • 懇親会長 梶原 あや
  • 幹事長代理 幸宮 チノ
  • 組織委員長 村上 ゆみ子
  • 読対委員長 白井 寛
  • 女性室長 浅野 りん
■ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 第11巻 1995年9月18日初版。近年のドラクエ4コママンガ劇場サイクルにしては、早い約8ヶ月ほどでの続刊刊行となる。エニックス党出身作家によってほとんど固められ、前後をしてエニックス党の最盛期を思わせる錚々たるメンバーが連名した。新鋭・村上ゆみ子氏が総扉・目次・巻頭を獲得するなど、その実力の高さを初見から見せつけた。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 12――――DQ6登場と浅野氏離党、新鋭山崎氏勃興

▼1995年末にドラゴンクエストVIの発売を見るのだが、不景気と相次ぐ災害・災難によってかつてのようなドラクエの勢いはすっかりと形を潜めてゆく。すでに二大RPGの片翼、旧スクウェアのファイナルファンタジーに株を取られていたエニックス・ドラゴンクエストは、復権の見通しが立たないまま、VIの予想外の不振によって党内バランスが崩れ、再編の動きに拍車が掛かるようになる。
党内再編の動きによって、将来を期待されていた浅野りん氏が早々に離党を宣言。元々あまり気乗りのしない感じの浅野氏の言動には惜しむらくもあったが、ドラクエ4コママンガ劇場をひとつの踏み台にすると言う漫画家当然の心理を代弁しているものではあった。新山・田村・牧野・村上・幸宮のエニックス党の地位が固まりつつある中で、更なる復権への道筋を立てたのが、新進気鋭の作家・山崎渉氏の登場であったと思われる。結局、ドラゴンクエスト7の発売を待たずしてドラクエ4コママンガ劇場の歴史は閉じられるのだが、今後は山崎氏を加えたエニックス党によって安定に終始することになる。

第12巻連名

  • 牧野 博幸
  • 新山 たかし
  • 浅野 りん
  • 幸宮 チノ
  • 池野 カエル
  • 村上 ゆみ子
  • きりえ れいこ
  • 栗本 和博
  • 梶原 あや
  • 藤森 ナッツ
  • ちるみる
  • 池野 カエル
  • 藤田 佳子
  • 越後屋 サイバン
  • 坂本 太郎
  • ふじい たかし
  • 白井 寛
  • 魔神 ぐり子
  • 原 淳
  • 小椋 みき
  • 山崎 渉
推定党役職
  • 永世代表 栗本 和博
  • 特別顧問 すずや 那智
  • 代表 新山 たかし
  • 代表代行 田村 きいろ
  • 副代表 きりえ れいこ
  •  〃  ふじい たかし
  • 幹事長 牧野 博幸
  • 広報会長 池野 カエル
  • 懇親会長 梶原 あや
  • 幹事長代理 幸宮 チノ
  • 組織委員長 村上 ゆみ子
  • 読対委員長 白井 寛
  • 女性室長 浅野 りん
■ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 第12巻 1996年3月23日初版。ドラゴンクエスト6発売後初の4コママンガ劇場で、「ドラクエ4コママンガ劇場」としては6が事実上最後の新シリーズとなった。鳥山明氏の絵柄に酷似していると評され、今後ガンガン編やギャグ王においても一大勢力を築き上げることになった山崎渉氏が初見。すずや那智氏はカバーを最後に離党。きりえれいこ氏も事実上離党した。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 13――――エニックス党・安定期の確立

▼1996年は村山政権の終焉と共に、自民党政権の復活が成し遂げられ、また病原性大腸菌・O-157の大流行と政治的にも世情的にも世界を震撼させるほどの大事件というものはなかった。やはり1995年の世情に比べれば、そうとも言える。
ドラクエ4コママンガ劇場も6年目を迎えて13巻目の発行と、振り返れば格段にペースは落ちたものの、依然としてゲーム4コマの中心的役割を果たしている部分は大きい。ガンガン・ギャグ王などの場も含めれば相当に安定感を覚え、そこはかとなく伝わってきていた党内事情に、一応の区切りがついたことを思わせる。この頃からエニックス党幹事長格の牧野氏が中心的役割で参加諸氏を引っ張ってゆく。小椋みき、ふじいたかし氏も地道な活動。浅村イオン(現・藍月イオン)、あずき・まめお、白鳥ハト氏らが初見。藤森ナッツ氏は元々FE系での活躍を希望したとされているためかこの回をもって離党している。ゲスト参加的な金田一蓮十郎・丹羽俊晴両氏もなかなかいい味を占めていた。

第13巻連名

  • 新山 たかし
  • 幸宮 チノ
  • 魔神 ぐり子
  • 村上 ゆみ子
  • ちるみる
  • 池野 カエル
  • 山崎 渉
  • 藤森 ナッツ
  • 白井 寛
  • 小椋 みき
  • あずき・まめお
  • 浅村(藍月) イオン
  • 水谷 みか
  • ふじい たかし
  • 越後屋 サイバン
  • 白鳥 ハト
  • 金田一 蓮十郎
  • 丹羽 俊晴
推定党役職
  • 永世代表 栗本 和博
  • 特別顧問 田村 きいろ
  • 代表 新山 たかし
  • 代表代行 越後屋 サイバン
  • 副代表 ふじい たかし
  • 幹事長 牧野 博幸
  • 広報会長 村上 ゆみ子
  • 懇親会長 池野 カエル
  • 幹事長代理 幸宮 チノ
  • 筆頭副幹事長 白鳥 ハト
  • 組織委員長 小椋 みき
  • 読対委員長 白井 寛
  • 女性室長 魔神 ぐり子
■ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 第13巻 1996年9月20日初版。前巻・前々巻と同じく半年のサイクルで続刊発行に至る。紆余曲折を経てドラクエ4コママンガ劇場の復権を匂わせつつ、安定期へと向かう様相を見せた。

October 31, 2004