INN nostalgia Game Essay

Memories Off 2nd Favorite Essay
白河 ほたる
Age:17 born:9/25 blood:B size:158cm 47kg
CV:水樹 奈々
My her image song: 翼を広げて(DEEN)
 恋人を一途に想い慕う、旋律の奇蹟

▼完璧であるが故に疎まれた、他編でのほたる像
流石はメインヒロインの重役を好演した白河ほたるは、文字通り見た目通り理想の彼女像とでも言うのだろうかな。今の御代においてここまで想い焦がれて尽くそうとされ、愛される男は杳々としておるまいだろうが、言い換えれば彼女も実に時代錯誤な女であろうやという事だろうなぁ。
束縛という言葉が正当かどうかはわからないが僕としては彼女のような性格を身近に感じるとするなら、この上ない幸福を感じると同時に、鬱陶しくなることも否めない。
「美食も過ぎればすぐ飽きる」とか、「美人は三日で飽きる」とはよく言うが、彼女のようにあまり恋人にべったりではあまり宜しくない。主人公・伊波健との邂逅は実にナチュラルで微笑ましい情景だが、それほどまでに健にぞっこんになってしまう彼女の心境は最後まで理解できなかった部分を否めないのだ。
夢に向かって打ち込む人というのは実に格好いいものであるし、また羨ましいものだ。そして、何よりも孤独という魔物につきまとわれねばならない宿業を感じ得る。一挙両得とは行かず、何かを犠牲にすることで得られるひとつ。白河ほたるという少女だけにとらわれず人間の限界、脆く壊れやすい人の心を如実に示したのが、メインヒロイン・ほたる編を除いた各ヒロインたちのストーリーにおける彼女の立場と考え方であった。
伊波健からすれば、彼女の厖大な愛情と恋慕に絆されて自らもその恩恵を彼女に注いだつもりが、実は疎遠とするための一環であったのは何とも皮肉なことであろうし、心鬼にして言えば、彼女の安易で何よりも美しすぎた恋が招いた自業自得と言えよう。つまりは本来、PSやDCのコントローラを握り、伊波健となるべき私たちに恋してしまったのが、彼女の本当の失意となった。彼女以外のヒロインのファンたちは思うべきこと。『白河ほたる』への贖罪を忘れるな。彼女を捨てる者として、それは男としての最低の礼節だろう。

▼盲目の愛が持つ、取り返しのつかない懐疑と秘密
実はこの白河ほたるは実に自信に満ちている。ある意味爽快であり、ある意味嫌みである。本編では無論、ピアノを習っているという経緯、間近に迫ったコンクールで優勝すればある権利が得られる。
彼女は己が予選を通過するどころか、優勝する事さえ通り越して、この権利について密やかな苦悩を抱えて健と交際しているのだからいやはや実に大したものではないか。彼女と同じ夢を抱き日夜懸命に練習に勤しんでいるであろう他の候補生は端から眼中になく、すでに夢を通り越して健とのことで頭がいっぱいなのだ。物語的にはそれでいいかも知れぬが、結果論を除いて話せば、そこまで優勝を確信して、その後のことについて悩んでいる事には全くもって脱帽だ。そんな彼女ならば、小泉内閣の外務大臣として外務省改革に意外な力を発揮できるかも知れない。健を外務事務次官に据えて「白河外相、伊波事務次官」想像すれば……外務省は変わるだろうなぁ。かくいう私はそんな外務省の職員にはなりたくないが(笑) 健のような奴の下で働きたくない。
無駄話だが、そんなでも健への愛情を支えに生きている。スランプになろうが失意に落ち込もうが「健ちゃん」という呼称に続くさりげなき言葉が彼女をずっと救ってきたのだと思うと、健気で献身的な彼女を捨てる事になる、他編での伊波健は非道の者に映るのだろう。
しかし、百歩譲って伊波健の全面的支援を訴えるとするならば、彼女自身に大いなる陥穽があることは、全ヒロインのストーリーを見て明らかである。自分の人生に関わる重大事を土壇場まで話せないでいたこと。これはどんな御託を連ねようとも非は彼女にあると断言せざるを得ない。
もし、彼女にとって健のことが本編で語られるように何よりも一番大切に想っているとするならば、それを知った時から少なくとも健にゆっくりと考える事が出来るくらいの時間を与えただろう。
それを考えれば、いかに言葉や態度で健を愛していると言っても、心の底では成り行き任せにつきあい始めた健への懐疑心を拭いきれなかった彼女自身のコンフリクトを無意識にさらけ出していると言える。とかく彼女に直接関係のない相摩希編での彼女の潔い(言葉悪くすれば、あっさりとした)態度がそれを如実に示していると言えよう。“深く愛し合っている恋人”という関係が、時としていかに銑鉄より脆いかという事なのだ。

▼忘れかけたメロドラマ。行き過ぎか、求めうる人の在り方か
彼女が求める音楽とその歴史、音に秘められた男と女の情景。実に奥が深い。さながらマドモアゼル・モーツァルトのように、白河ほたるかくありたや……とは言わないがね。
私が彼女に贈るとする曲があるならば、我が指標・DEENの『翼を広げて』だろうな。「♪翼を広げて旅立つ君に、そっとエールを贈ろう。誰のためじゃなく、ただ君のため……愛してたよ」。私だったら彼女に慣れないピアノを弾きながら歌ったかもな。※JASRAC未公認
白河ほたるファンには悪いことだが、私は彼女とのエンディングよりも、他編でのほたる像が好きなのだ。所謂、夢を追う人。伊波健を諦めて自身の夢を追う一人の少女。私は抱きしめてあげることはしないね、そこんとこは健に共感。「翼を広げて旅立てよマイラバー。あなたの前途に光り輝く大空が続くことを祈って……」なんて、前歯全部が浮いて取れてしまうほどの台詞ひとつでも言ってやって自己満足にふけるか?
そんなこんなで、ほたる編はまるで奥様昼メロの青少年版と言った展開。ラストを語れば、「おいおい、それはれっきとした妨害行為だろう」という批判と重ねて、「伊波健と白河ほたるは舞台俳優として大成できよう」と。「僕達の愛は永遠だよ……」などと言ってもらいたいもの。本編を通じて健がどんな浮いた台詞を吐いたかは思い出すまでもないが、たとえどのようなドラマであろうと、こんな台詞を臆面もなく演じられる役者は凄いと思う。私の大ファンである俳優・宮内敦士さんも、駆け出しの頃、あるVシネマで歯が全部取れてしまいそうな台詞を吐いていたことがあるそうだが、伊波健には宮内敦士2世となってもらいたいな。10年後の伊波健のイメージとしては宮内敦士を思い浮かべるのはきっと私の贔屓目だろうが。
しかし、本当にこのほたる編を通してみて、私は何度コントローラーのAボタンを押すどころか、コントローラー自体を放り投げてCDを聴いて歌っていたことか。メロドラマは臭い、臭くて臭くて、それでもたまに食せば美味しい珍味でもある。ほたる編を触れてみれば昼下がりにテレビで放映している主婦対象の昼ドラの二番煎じではないか。キッズウォーなどではないぞ。愛憎劇。さながらほたるをメインにしてメモオフ2の全ヒロインを絡ませれば、完璧それだ。実写の白河ほたる……最近の若いアイドルは知らんからな。
とにもかくにも彼女のエンディングは熱い。爽やかに似て実は熱い。伊波健がそうさせていると言う。お誂え向きな終幕、あるいはそれこそが全ての障害を乗り越えた真実の愛の在り方か。答えはメモリーズオフファン諸卿それぞれだろうが、その端くれとして一言。
「他人の幸福は、つまらんねー」 それが本音。

14 April, 2002