INN nostalgia Game Essay

Memories Off 2nd Favorite Essay
白河 静流
Age:21 born:6/30 blood:A size:160cm 49kg
CV:菊池 志穂
My her image song: 言い出せなくて(稲垣潤一)
譲り続けた宝物、気丈な姉が抱懐した嫉妬と鍾愛

▼清楚嫋細なるヒロインの姉。最も“普通人”らしい性格
鷹嶺 昊がメモリーズオフ2ndにおいて最も入れ込んだシナリオである。そして伊波健を全シナリオ中最高に憎みながらも、一番強く感情移入して、白河ほたるに哀憐の情を逞しくした矛盾多き物語と言えたのだ。滅多に恋愛もののゲームの夢を見ない(夢自体あまり見ることがなくなった)私が静流の夢を見た記憶があるのだから、相当入れ込んでいたのだろう。そして、稲垣潤一の名バラード「言い出せなくて」のイメージに最も相応しいキャラクタを見出す。また歌詞全体もさることながら、物語の終盤、彼女にこのフレーズがよく似合うのだ。「♪心を偽るように繕うなんて本当にさよならにするつもりか」
健に感情移入するなれば私自身年上好みと言われてしまえばそれまでだが、どことなく彼女の物語は、後述・南つばめの話と重ねて大人の様相諸所に色濃くにじみ出ていて自分自身入り込みやすいものがあった。いつまでも若いと思っている私もやはり確実に年を重ねているのだろうと実感させられる反面、健が吐露しているように、彼女といると心安らぐようだと。社会層の様々な激流に呑み込まれてゆくと、ほたるのような甘えっ娘や巴のような明朗快活、鷹乃のようなある意味人生を達観しているような感じの女性よりも、何か普通っぽい感じがする静流のような女性を求めて行く気がするのだ。俗に言う癒し系ではないのだが、もしも健の立場が若干なりとも違っていたとするならば、むしろ静流との恋愛経緯が自然であり、物語としては極めて平凡であるが後味の善悪がない安堵感を得られたであろう。
ただし、彼女はメインヒロインには成り得ない。あえて欠点を正直なところ申し述べれば、他のヒロインと比べてももう一つ押しが足りない。常に清楚な情緒を醸し出しながら、実は車をあまり運転したことがないのに、F1レーサー顔負けのスピード狂に平然とされて、また親友に影響されてのプロレスファンであり、健に見様見真似の技を掛けるなど、時折見せるギャップが心惹くことは確かだが、彼女を取り巻く家庭や個人事情が得てして平々凡々であり、やはり妹ほたるのように「ほたる的ギャグ」までの両極端が見当たらないのは静流のイメージを徐々に確立され、それが最大の長所となりうることだが、華やかさが無いために実は結構なほど損をしているのかも知れない。
でも、私個人としては彼女が一番好きである。5人のヒロインの中では最も現実にある普通の女性に近いからこそ良いと考えているのだが、まぁ、やはりあの「よしよし」と、さながらTo Heartの藤田浩之とマルチを思わせる場面が良いのだろうかな。私は夜の公園での場面をいち押す。大人だねぇ~、健ちゃんと。

▼妹の恋人に寄せる親近の情。目覚める羨し、健の優しさ
妹の彼氏。ある意味、メロドラマである。奥様昼メロの格好な題材だが、残念ながらこの話ではあれらの足下の影にも及ばない。しかし、妹の彼氏である伊波健は恋人の姉に惹かれてゆき、健の彼女の姉である静流はいつしか親近感を恋心に変えていった。近親相姦というようなあからさまな背徳観念ではないにしろ、マイナスから始まる恋愛。このお話ではわずかな悶着があっただけでほたるは消えていなくなるが、実際ほたるが彼らの近くに居続けていたとするならば、奥様昼メロに大抜擢なドロドロした関係になっていたに違いない。夢を追い続け日夜努力するほたるとつき合いながらも、その姉と人目を忍ぶ激しい恋に溺れ堕ちてゆく伊波健。やがてほたると別れて静流とつき合ってゆき結婚するものの、再びほたると惹かれ合い、静流もその寂しさから別の男(稲穂信あたり)と一時的な関係に……。何か反吐が出そうな粗筋だが、まあ、そんな話すら容易に思い描ける関係なのだ。実際、静流にとって見ては、いかに『ピンクのドレス』の経緯があるにせよ、事実伊波健は紛れもない妹の彼氏であるから、そんな短期間で割り切れる問題ではないだろう。
となると、伊波健である。静流編に見る彼は、ほたるを本気で愛しているとは到底言い難い言動に終始した。「姉のどこが好き? いつから好きになった?」というほたるの問いかけにわからないと答える健。彼の言うように、人を好きになると言うことは、その時期や特定の部分を指定することは出来ないのが普通であり、ほたるのような質問自体が愚問である。だが、私自身悔しいが、ここは伊波健に賛同する。
まぁ、恋人同士家族ぐるみのつきあいと言うお話は、古今東西巷間に絶えないポピュラーなものである。故に同じ立場として考えてみれば、恋人の兄弟が半ば横恋慕して奪い合いをする等という血なまぐさい話が往々にしてあってはたまらない。それこそ疑心暗鬼どころか、人間不信の坩堝と化すであろう。ただでさえ理由不明の凶悪事件が頻繁している。もはや犯罪に理由を求めることが古きことなのかも知れないが、せめて幸福な家族同士の交際くらいは不変なものであって欲しいな。
だから単純に考えてもわかるように、静流は健とであった瞬間に彼に恋をしてしまったわけである。いかに言葉を並べ繕い、ほたるを援護しようが健を突き放そうが、それらは全て偽りであろう。「言い出せなくて」のフレーズよろしく、一番それをわかっていたのは、他ならぬ健自身であった。
彼はまたその性格ゆえに葛藤するが、いずれにせよ最初に蘊蓄を垂れたように、静流に傾くのは、彼女の名前よろしく、むしろ自然なものであるから、無下にほたるを悲恋に追い込む健を責めることは、逆に烏滸がましいことだと言えよう。

▼理想の姉様女房、そして波乱に満ちる元恋人との関係
勘繰りだろうが、彼女が言った「家族は死ぬまで家族」という言葉が、暗に健との関係の先行きを示していると言えなくもない。
さては“フルーツスープ”なる、七色十色の奇異な食物を微笑みを浮かべながら健に勧める場面で、「静流さんを食べたい」などと戯ける健とプロレス技の脅しを掛ける静流。永遠に解けぬ魔法などと嘯く二人なのだが、果てさて、ほたるはそうそう割り切れているとは思えまい。実際、自分に兄弟がいて、自分の恋人を兄や弟に奪われて同じような境遇を迎えているとしよう。はっきり言って心中穏やかならざるものあるはず。ほたるに深く同情するのはここである。まあ、「どんな地獄が待っていようと離れない」と胸に誓い合った健と静流は、険阻な恋の高嶺を越えた先に待つ理想郷を夢見ているのだろうが、何々、ほたる@鷹嶺 昊としては、そうは問屋が下ろさないぞと。ましてや愛した元恋人と実の姉。潔く身を引く悲劇のヒロインとなれるかどうかと言えばそうではない。逆に、元恋人と、実の姉だからこそ瞋恚の炎はさらに暗く深く燃え上がるのでは無かろうか。さながら、“久遠の絆”の吉川絵里のような末路をたどりそうで心配の種が尽きない。静流ファンの諸卿よ、この後のほたるの心情幾ばくか確かめられよ(笑)
それを考えれば、実にこの二人、見た目通り将来を楽観しておりますなぁ。「静流さんを食べたい」などとまぁ聞いた瞬間、断崖から白い波飛沫打ちつける海面に飛び込みたくなるようなセリフを吐く前に現実を冷静に見つめてもらいたいものだぞ。
まぁ、恋は盲目、愛はなんたらと言うが、本編の彼らを見ている限りではそんな私の危惧など蚊帳の外。その名のように、今まで耐えに耐えてきた思いの丈を怒濤のごとくあふれ出す静流と、圧倒されまくる伊波健。身体が保つか伊波健(?)
正直なところを言おう。「お前が羨ましいのだ」何のことはない、本心はただそれだけ。うーん……いいなぁ……静流さん……(爆)

April 19, 2002