INN nostalgia Game Essay

Memories Off 2nd Favorite Essay
中森 翔太
Age:17 blood:AB
CV:福山 潤
柔和な表情に秘められた、儚き過去への想い

●メモオフ2実質の主役格、優柔不断なる親友に対す真の友情
白河ほたる、南つばめという当作メインストーリーに深く関与することになる中森翔太は、いわば澄空の三上智也が想いつづけていた桧月彩花という少女とある意味同格であり、メモリーズオフ2ndの実質的主役格であると言っても決して過言ではあるまい。時折戯けるその言動や表情に常に憂色をたたえ、現実に彼がいるとするならば一躍学校一のもてる男、その手の雑誌などでも街角の美少年謎と銘打って紹介されてしまいそうな人物だろう。
それぞ昭和の純文学の主人公のような彼の経緯を触れれば、電車の流れる景色を寂しそうに見つめる学生服の少年が達筆な文字で誰かに伝えるであろう手紙を綴る。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」等という名節よろしく、彼はそんな古来日本の男性が理想に描いていた恋愛……と言うよりも思慕の情か。これをつぶさに表現されたキャラクターであると言えよう。
そして、何よりも親友・伊波健とほたるの仲をまるでわがことのように心配して、男女間について意味深な言葉を残したりと、稲穂信と並んで実に人生を達観しているような大人っぽさを覗かせる。
かといって近づき難き雰囲気かと思えば実はそうではない。むしろ逆にすごくフレンドリーで一発ギャグをかましてくれたりする。常に憂色をたたえる彼だからこそ、その普段のギャップに驚かされ、不思議な雰囲気に周りを包み込むようである。
穏和かと思えば、白河ほたるに対する態度に煮え切らない伊波健と掴み合いの喧嘩を成すなど、とかく彼の友思いはどこかしか切なさを感じさせるくらいに美しい。そして傍目から見てもほたるが少なからずも彼に恋心を抱いておらずと言うのがけったいな話ではないか。本当だとするならば白河ほたるに人を見る目なしと言わざるを得ないな。

●振り切れぬ過去の想い出に呵嘖す二つの結末
中森翔太を回顧すればするほど、彼のイメージとは裏腹な儚さを抱懐する。初恋や失恋などという甘酸っぱいイメージの儚さなどではない、その年齢で実に大きな因果を背負っているのかと思えば、時に押しつぶされそうなほどであり、手助けすることも出来ず、それでも背負い続けなければならない彼の姿に、強い哀愁感を抱かせる。
さる二つの結末において、翔太の辿る運命は明暗を分ける事になるのだが、ひとつの勇気を出せないために大きく流転することになったと言える展開には、彼自身の心の弱さをさらけ出すようで実に後味が悪い気分になることも否めない。後に翔太が起こすある事件を見ればましてそう思うことで、今まで彼が仄めかした言葉の意味を彼自身の行動によって全て否定されたようであったから失望感を抱く。
だが、逆に気持ちが解ると言っても過言ではない。第三者の立場から言わせればそうなのかも知れないが、人間が元来弱い生き物で、誰しも心に傷のひとつを抱えていることを如実に示し、それを笑顔の仮面に隠しているものだとするならば、彼は典型的なそのタイプなのであろう。
そしてもしも伊波健・稲穂信・中森翔太の誰になりたいかと言うなれば、私は稲穂信よりも中森色の方が強いことを断言できる。格好つけない自然な少年、かといって女の子にもてるわけではなく、過去の思いにとらわれ続ける弱い人間。メロドラマの脇役のようなベタな物語に、私は強い憧れを抱くのだ。

April 21, 2002