INN nostalgia GAME COLUMN
メモリーズオフ~それから~
©KID |
CV/かかず ゆみ
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Age:18 Birthday:4/6 Blood:AB Height:163cm Weight:46kg
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INN nostalgia INSPIRATION SONG
恋の花
徳永英明(1993) 作詞・作曲/徳永 英明
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――――摂家の格式、柵の窮鳥と化す。自由を求めた虚偽の演武
保守的家風への懐疑、真実と破却への道歩み出す一蹴との偽恋
あたら織田五徳が松平信康に嫁したかのように政略を基幹とするなど今どきこんな家など無いであろうと思われる程、藤原雅はその名の通り、摂関家藤原氏の格式を擬する名家の令嬢とばかり。しかしながらその実は我が鷹嶺家に代表される二流家庭にも劣る、非人道の家柄に他ならない。形式張った和の礼法などはさながらがんじがらめの超保守的な気を見、まるで明治以前の儒教精神を極めて偏らせた時代錯誤の大愚を犯している。
まあ、雅の祖母から言わせてみれば「藤原家のことに口出し無用」と、けんもほろろに返されてしまいそうなのだが、それではあまりにも欺瞞に溢れた世界に絶望し、蒼穹に飛び立ちたい鳳凰を封殺するかのようで不憫に余りある。
ましてや雅のような絶世の美女がいつからか決められた許婚は良しとして、あたら四十路の中年血族婚ともなれば、鷺沢一蹴でなくても我が手で救いたいと願うのはむしろ当然の衝動に他ならない。まあ、織田市と浅井長政、和宮親子内親王と徳川家茂のような鴛鴦ならばまだ諦めもつくだろう。しかし世の中そんなものじゃあない。陰湿と虚偽に嘖むガラスの少女が一大決意をして脱却の道を歩み始めたきっかけは、陵いのりと別離したばかりの鷺沢一蹴という男との出会いな訳だが、これぞ皮肉にも暗闇の未来に包まれたはずの雅に射した、一条の光だったのであろう。全く、神様というのは酷なものだなあと思ったのは、タカミネだけではあるまいが。
一途に照らした真実への光芒、頑なな失望を氷解する一蹴の努力
雅編での鷺沢一蹴はそこそこに評価できる。まあ、相変わらずメインヒロイン・陵いのりがもたらす騒擾は許し難いものがあると言えばそうなのだが、しかしながら義妹・縁編ほどいのりの邪悪さは影を潜めるから良しとしよう。
機械的とも言えるか、ただシニカルと言ってかたづけてしまうかは別として、雅という少女はある意味、俗世間に穢されていない無垢な心を備えているから、蒼氓の心を捉えて止まないのだろう。善悪紙一重というのであれば、藤原摂家の太皇太后・雅祖母の権威はかろうじてプラスの面も与えていたと言っても良いのかも知れない。
しかし、偽りと言え一蹴に対し恋人関係を求めたのは雅に一縷の人心有りと言うだけではない。鷺沢一蹴という愚か者に、神懸かり的な救世の後光でも見たのだろうか。まあ、意外にも恋愛に対しアバウトな稲穂信あたりでは、逆効果とまでには至らないであろうが、鬼婆の恫喝一下、雲散霧消してしまうのであろう。しかし、逆の意味で鬼婆や摂家殿上人の威信に完全と対抗できる素材と言えば、稲穂信やタカミネコウが評するように、恐怖知らずの卑賤の恋愛達者、伊波健か鷺沢一蹴をおいて他にはないのである。いのりの誑惑に、一時は暗黒地獄への先途とするべき羅刹変化の危機を見たが、史上最大の決断においていのりに引導を渡した一蹴の態度には敬意を表しよう。まあ、この男の弛まぬ努力の経緯を推し量れば、この程度の迷いなど人間くさくて逆に好意を持ってしまいそうだがな。
自由を得て羽ばたく鴻、伝説の刻銘に惑うは聖職者
敢えて言わせてもらおう。イナケンと白河妹との伝説に取り憑かれた浜咲学園という名の高校に、またしても汚点を刻む終章の一蹴と雅。織田信秀公の葬儀に臨んで、位牌に焼香を投げつけた「虚け者」もビックリ、ダスティン・ホフマンもかくやとばかりの行動に、鷺沢一蹴は明智光秀も不意を打たれたとばかりの謀叛を起こし、木瀬歩一派の造反をも誘発した。これはひとえに人望か、後悔か。現実を考えてみれば一世一代の晴れ舞台をその名の通り一蹴してしまうわけだから、それは校庭事件をはるかに凌ぐ伝説となるに違いが無かろうな。
まあ、藤原雅がその後鷺沢一蹴と、海よりも深い恋仲に落ち、狂気の沙汰もなんとやら、閻魔様も諦めモードとばかり、鬼婆の策略も蛙の面に何とやら。まあ、それは良しとして、残されたのは浜咲学園の歴史に刻まれた艶話。ただでさえ印象薄な学校の聖職者たち。さながら共和制国家のように主権在生徒。傍若無人な恋人たちの行動に、聖職者の心境は察して余りあるな(笑)
どうぞ藤原雅様、後に教師となって学園に赴任し、落ちた学園の権威を取り戻すように切に願うものである。