CV　:宮田　幸季
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マグローは哀しいかな、想君の中では全登場人物中、最も不遇なキャラクタであろうか。彼の存在意義はとかく重要な部分を占めているがゆえに、全てのマイナス面を一身に……とまでは行かずとも、何とも加賀正午のために貧乏籤を引かされることが多いのである。
正直なところを言えば、かく言う私はマグローはやはり加賀正午に一歩引けを取るキャラクタであろうとしか思えない部分に終始している。脇役の宿命、細かいところは見逃せよとばかりにマグローファンからは言われそうだが、如何せん、彼は無器用すぎる。いや、ただ単に純粋、恋愛に対して晩生なのか、とかく好意を寄せる女性に対して、不必要なほどにためらいがちなアプローチをくり返しているのである。見ていて無性に苛つくというのか、あなもどかしやとでも言うのか、何となく自分を見ているようだとでも言った方が良いのかな。加賀正午の恋をサポートする男性陣では、やっぱり稲穂信の次点とはいうものの、信に３歩も４歩も遅れている。信を見習い貴様もアズテクの街に行けとまでは言えないところが力丸君の惜敗点なのである。しかし、ただ加賀正午や稲穂信に追従するばかりではないことは彼の存在自体から解ってはいることだったが、それでも、やはりアクの強いこの二人やトビーらに比べれば力量不足は払拭できずに終わってしまう。ボケ役の運命か、或いは将来、このコラムを書いている頃に流行の「ダンディ坂野」氏を、君は目指すのかという感じだろう。

一層のこと、ボケキャラであるとかたづけてしまえば楽なキャラクタなのかも知れないが、そうは行かぬ。不本意でも力丸派の諸卿もあれば、書かねばなるまい。
『かの女』に想いを寄せるマグローの心境は理解が出来る。いや、むしろ世の多くの男性諸兄、とかく自分自身を含めて、このマグローこそ、極めて自分像に近い、いわば血縁の兄弟以上に親密な感情を抱くキャラクタかも知れないだろう。故に彼のもどかしさは異常に頭に来る。まあ、好きだから敢えて大批判する……などというシャレたものではないのだが、結局、彼は恋愛に関しては極めて保守的な思考の持ち主であったことだろう。なんだかんだと言っても、『かの女』に寄せる一途な想いは当初からボタンひとつを掛け違えたものにしか過ぎない結果となって（まあ、それがなければ加賀正午の存在価値は薄らいでしまうのだが）、どう足掻いても結実しないで終わってしまう。結局、彼の行動は終始、まあ無意味であるとまでは言わないのだが、その優しい性格ゆえに、『第三の人』の地位から抜きんでる力量ではなかったのだ。
現代社会の中で失われてしまった、『がむしゃら』、『純粋』という死語。報われなくてもそのがむしゃらさ、純粋さは脱帽。片思いと雖も、ここまで人を好きになってみたいと思うものではある。掛け間違えたボタン、そして『かの女』が懐き続けた依存心。これにもっと早くに気づき、加賀正午を蹴落とす小さな勇気があればと、今もってなお、力丸真紅郎君に対する悔いは残って止まないのである。まあ、それにつけても彼はこの後夥しい成長を遂げたであろうな。