蒼穹之亭的ゲームコラム
テイルズ オブ リバース~二種族に見る耶蘇・回両教徒の闘争現実
ヒューマとガジュマ……中東・チェチェン紛争になぞらえた民族原理主義
2004年11月11日、中東・パレスチナの独立を陣頭指揮してきた、ヤーセル・アラファトパレスチナ解放機構執行委員会議長が没した。功罪両立が極端な中東の不死鳥の落日のニュースに鷹嶺もため息を隠せなかったのが記憶に新しい。 |
二大ヒロインの飽くなき奮戦と、パーティに見る種族偏重
主人公ヴェイグたちの旅はアガーテの狂気に巻き込まれたものであろうが、ヴェイグはヒロイン・クレアが攫われてしまったからだと言うことで、元々カレギアの危難に対する認識は薄かったようだ。まあ北の辺境村に永住している様な青年が国都の殿上人たちが画策している野心など知ったことではないと思うのは間違ってはいないだろう。それよりもクレア・ベネットのようなヴァルネラビリティーの存在が極めて異例であり、今作の真の英雄はこの女傑ではないだろうかと思うほどである。まあ、主人公たちでさえ苦戦するほどの強いバイラスが彷徨する世界を単独で駆け回る事もしばしばなクレアやアガーテは文字通り恐れ知らずだろう。
しかし、そんなヒロインたちの奮戦の側らで、リバースの世界観が訴求する民族間格差の問題は根底から破綻していた。言わずもがな、パーティにおけるガジュマの存在がユージーンという戦士ただ一人だけだったこと。あと一人、ガジュマのキャラクタがいたならば、後半で執拗に提起される二種族の紛争、それに対するヴェイグたちの言葉も得心できたところもあると思うのだ。説明不足、物語の補填はプレイヤーが成すべきことだとは言うものの、とかくラストでのアガーテの御生害は到底納得できるものではない。ミルハウストも結局のところ存在感に欠ける部分もあり、補填するにも足りない部分が多すぎた感が否めない。
前作・テイルズオブシンフォニアや、テイルズオブデスティニー2のように有終の美を飾ったものとは確実に反転した、ダークな終焉。ラストを迎えて、それまでの高揚とした気分が崩壊し暗鬱とした気分になってしまったのは残念で仕方がない。
先にも言ったが、ヒューマとガジュマが耶蘇・回両教と重ねるならば、アガーテの生害は正しく非業の死と言えるアラファト氏に通じるものがある。後半以降アガーテの生き様に深く共鳴してきた身としては、やはりリバースの制作者はガジュマを駆逐し、ヒューマ至上主義を確立したい存念があったのだろう。ラストダンジョンでの人心合一の場面は無理矢理な当てつけ。これも当初からバイラスへの責任転嫁というものであるから種族間の問題解決の説得力には遠く及ばず、生焼け的な苛立ちが、徐々に噴出してきたのが正直な思いである。
吉積氏論理に破綻の予兆、時代に不具合なる終始一貫
プロデューサの吉積信氏が某紙で記しているインタビューの内容を見るに、改めて前作・シンフォニアまでに培ってきたポジティブ論理の核心に破綻の様相が見え始めてきたと言える。元々、左翼的な理想を旗印に人気を保っていたと言えるテイルズオブシリーズも、今回このリバースにおいて、ヒューマとガジュマに置き換えた人種差別。そのより身近で、より高度な世界的問題を中途半端に切り残してしまったからである。種族的対立は政治的な要素も爾り身近で起こりうること・・・と、吉積氏は言うが、全ての根源である『宗教・会派』にほとんど言及が行き届いていなかったから、物語自体も生焼けに近い。
個人的な話だが、同じ竹山洋氏が脚本を担当した大河ドラマ『秀吉』と、『利家とまつ』の面白さが、天地ほどに違っていたのと同等だった。左翼的雰囲気のテイルズオブシリーズが、下手に右傾化してしまえばかえってうやむやになってしまう悪い例であろう。主役級のメンバーのうちで、吉積氏が今回のリバースにおいて、テーマの視点とされたアニー・バースが終始特段アピール不足な感を否めなかったのは実に皮肉な感じがした。女の子キャラクタにすれば良いというものではないだろうと、言いたくもなる。ゆえに主人公ヴェイグのキャラクタ性は問題ではなかったと鷹嶺は思うのだがいかがなものであろうか。
次回作に期待と共に、二周目の気力なく
テイルズオブシリーズは鷹嶺にとって、二周目を吟遊詩人の如き心境で楽しみにすると言うものがあるわけだが、リバースはかく言う理由で、どうしても二周目を楽しみたいと思う気分にはなれない。簡潔に言えば、最後の最後で裏切られてしまったという思いが残ってしまったからだ。
黒幕はジルバと言うことだが、これは目下の予想通りであって別段驚くこともなく、逆に彼女の突然の豹変ぶりには唖然としてしまったものであり、ごり押し的なものだと思えてある意味冷めてしまった。アガーテの健気な姿も上っ面を撫でるだけで内面の表現もおざなり。終盤の独特な勢いに呑み込まれてしまうのだが、まあこれはRPGでは致し方がないのだろう(終盤になってまったりとした雰囲気をもつのもある意味腹が立つ)。
クレアよりもアガーテに寄っていった我が心境のショックは立ち直ることいささか時間が経つ。次回作が出るまでには何とか忘れていたいものだな。
まあ、かなり批判的な文章になってしまったが、かいつまんで言おう。
『テイルズオブシリーズには荷が重過ぎたテーマであった』・・・合掌、安らかに・・・アガーテ様。
December 23, 2004