卒業~Graduation~
それが世に出たのは確かまだバブルに浮かれていた時期だったと思う。と、なるとこの『卒業~Guraduation~』は相当前の作品と言うことになるなぁ。私が高校卒業してPC98を購入した後、初めて買った美少女育成シュミレーションと名のつくゲームは当作品だったような気がする。有名なプリンセスメーカーは、これよりもずっと後だったような気がする。
なぜこれを買ったのかどうか、今ではそのきっかけがよく憶えていないのだが、妙にはまった記憶があります。もちろん、今でもこのキャラクタたちはそれぞれにしかない個性を持っていて好きなのであるが。
嗚呼、無性に懐かしきかな。こんな時期もあったんだなあと、今さらになってレビューを語るのも恥ずかしいのだけど、やっぱり面白いものはいくつになっても面白いものなんだなと思うわけなんだ。
順当に数えれば、今や彼女たちは二十代後半。後作と言われる『結婚~marriage~』を経て立派な旦那さんを持って幸福溢れる家庭を築いているはずだろう。本当、そう思うと私も歳を取ったものだと実感させられる瞬間だった。
残念ながら今やこの作品は手元にはない。断片的ながらも鮮明に残っている記憶を辿り乍ら、この懐かしい作品を回顧して行く。
愛するべき個性あふれるキャラクターたちへ、果てしなき旅路の途上、ある街で見かけたこの学園の物語を吟遊詩人が奏でていた。私はそれを聞こう。そして、再び機会があれば会ってみようじゃないかな。
当時君たちを担当していた担任からメッセージが届いている。聞いてもらいたい。
【Dear everyone...清華学園女子高等学校卒業生5人に捧ぐ】
旧華族の御令嬢・高城麗子様、この不景気の時代、あなたの財閥は大丈夫でしょうか。高い理想の男性像も良いとは思いますが、お金が無くても心優しい、しっかりとした男性と末長く暮らしていって下さい。
中本静様、いつも貧血で倒れていた病弱な身体は治りましたか。子供が出来たとき、丈夫な身体でなければいけません。あなたは頭脳明晰、穏やかな女性ゆえ、健康にさえなれば良妻賢母の鑑です。
新井聖美様、本当にあなたには手を焼かされました。ですが、何事にも一途でひたむきな姿勢は私たちが忘れてしまった大切なものを思い出させてくれるようです。五人の中で、あなたが一番、純粋で心優しい人だと信じてます。
志村まみ様、永遠のティーンズと呼ぶに相応しい天真爛漫な性格、今も変わってはいませんか。糸の切れた風船のような行動には散々走り回された記憶がありますが、それもあなたらしさです。いつまでも若くいてくれるよう、願っています。
加藤美夏様、学級委員長としてそのリーダーシップには頭が下がりました。スポーツ万能で何事も引っ張ってくれたこと、大いに助けられました。長寿庵の蕎麦、相変わらず美味しいですね。長蛇の列のお客さんたちの中には、きっとあなたの笑顔を見れば元気になれると思っている人がいるはずです。
確実に歩んできた君たち、それは決して私たちの記憶から忘れて行くものじゃないことを、私は信じている。誰もが歩んできた青春の日々。君たちの物語はきっと、その中の一つの道の足跡なのだから……
またいつの日か、どこかの街で出逢える日が来ることを、私は信じ、願っている。その日まで、さようなら。
3年B組 担任 碇矢 祐一郎
新井 聖美(Kiyomi Arai)
12月3日生。家はバイクショップ。父と弟の三人暮らし。根は優しくて気立てがよいのだが、素行が悪いために学力は最悪クラスだった。当然、学校はさぼりがちで指導に一苦労させられたものである。
現在、新井モータース店主。F1のマシン調整依頼などで多忙な日々を送る。
加藤 美夏(Mika Katoh)
7月23日生。家は蕎麦処長寿庵。三人姉弟の長女。成績は平均クラスで運動神経抜群。学級委員を務める人望者なはずなんだが、どこか鉄砲玉のような行動を取ることしばしばであった。
現在、スポーツクラブのインストラクターをしながら家業を助ける。
志村 まみ(Mami Shimura)
1月4日生。家は美容室。新井とはまた違った意味での問題児。卒業を控えた高校三年生らしからない子供ぶりを発揮。我が道を行くといった感じなのだが、その一途さがかえって憎めない部分があった。学力は聞くに足らない。
現在、某有名製作会社でTVアニメの制作スタッフとして活躍。
高城 麗子(Reiko Takagi)
10月3日生。家は平安朝からの旧華族・高城コンツェルンの令嬢という身分から高飛車。なかなか言うことを聞かない問題児。成績は優秀なのだが、少しでも気に入らないことがあるとすぐ反発したものだ。扱いにくさは日本一。
現在、高城グループ外資系企業に秘書として活躍。不況の波に悪戦苦闘。
中本 静(Shizuka Nakamoto)
9月18日。学者の父をもち、素行優良、学力優秀と文句無しの模範生となるはずだったのだが、ウィークポイントは極端な虚弱体質と言うことである。人並みの活動を行えないために常に気遣いが必要だった。留年させることが難しい(笑)
現在、生物学者兼ユネスコ世界遺産保護調査員として全世界を飛び回る。
碇矢 祐一郎(Yu-ichiroh Ikariya)
当時25歳。清華学園女子高等学校3年B組担任。問題児5人組を抱えて1週間の平均睡眠時間が4時間というハードな1年を送った教師。円形脱毛症と胃潰瘍は慣れたものだとか。
現在はこの5人の誰かと結婚したらしいのだが、所在は不明(笑)