INN nostalgia Game Essay
シスタープリンセス
MEDIAWORKS,Stack / 2001.3.8
limited edition $9,800 / nomal $6,800
PlayStation / AVG / CD-ROMx2
キャラクターデザイン:天広直人/シナリオ:公野櫻子
主な出演/可憐(桑谷夏子),花穂(望月久代),衛(小林由美子),咲耶(堀江由衣),雛子(千葉千恵巳),鞠絵(柚木涼香),白雪(横手久美子),鈴凛(神崎ちろ),千影(川澄綾子),春歌(かかずゆみ),四葉(半場友恵),亞里亞(水樹奈々)
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私的評価(6段階 良←S-A-B-C-D-E→悪)
全体 |
S |
キャラクター |
S |
ゲームシステム |
A |
音 楽 |
C |
操作性 |
S |
パッケージ |
S |
ストーリー |
C |
2Dグラフィック |
B |
オープニング |
C |
声 優 |
S |
ゲームバランス |
A |
感動度 |
D |
Hの必要性 |
- |
共感度 |
C |
購入特典 |
A |
価 格 |
A |
季節感 |
C |
マニュアル |
B |
萌え度 |
S |
プレイ期間 |
S |
マンネリ度 |
A |
明るさ |
S |
訴求力 |
E |
年齢推奨 |
A |
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人類古来から不変の感情~『兄』と『妹』の意義
シスプリについては、今更私ごときが語る間もあるまい。ゆえに、今回のエッセイでは、シスプリに見る人間の心を勝手気ままに書いてみたいと思うわけだ。よろしくおつき合い願いたい。
本来、『妹』という言葉は、「いも」という尊称である。「男が女を親しんでいう語。主として妻や恋人にいう(広辞苑)」。奈良飛鳥朝に遣隋使となった著名な小野朝臣には、『妹子(いもこ)』という名が付いている。対して『兄』を「せ」、または「え」と呼び、これもまた女性が男性を親しんで言う尊称であり、645年・大化改新で蘇我氏を粛清した英傑・天智天皇の諱(いみな)、『中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)』。飛鳥朝の左大臣・橘朝臣諸兄(たちばなのあそんもろえ)などが著名だ。両方とも、高位高官の賢人に与えられた呼び名かも知れない。
話はお堅くなってしまいそうだが、要するに、『兄妹』というのは、肉親を越えた意味で、神世の昔から掛け替えのない、両親に続き最も大切にすべき存在であると言うことなのかも知れないし、いわんや『兄妹』という関係は、何にもまして高貴であり、神々しくもあり、不犯の関係であると言うことの証明ではなかろうか。
ゆえに“兄妹”を持たれる貴方、“妹”、ないし“兄”を大切になされたし。
それは異性の兄妹のみに非ず、兄弟・姉妹にも通じる慈愛・情愛
記紀神話以降の漏れ聞く話では、実に兄弟姉妹が争えば、国滅ぶ・・・と極端な話ではない気がする。皆さんご存知、有名なのが、源頼朝・義経の兄弟。シスプリのような美少女萌え萌えの妹ではないが、皆さんのイメージ的には、義経といわば、精かん爽やかな美青年ではあるまいか。
ご存知のように、頼朝はこの出来の良い弟を煙たがって最終的に攻め滅ぼした。結果、鎌倉幕府を打ち立てた頼朝だが、源氏の血は息子の代で絶滅してしまう悲劇に見舞われた。兄弟を大切にしなかった結末だと言える。かたや、平氏一族は兄弟のみならず仲が良かったと伝えられる。最終的には壇ノ浦で滅亡したわけだが、一時なりとも栄耀栄華を極めた。兄弟の力強しと言うのは言い過ぎであろうか。
また、サッカーJリーグのサンフレッチェ広島のモデルとなったかどうかは知らないが、サンフレッチェ=三本の矢で有名な、毛利隆元・吉川元春・小早川隆景の三兄弟。この兄弟の結束は、豊臣・徳川の圧力をも乗り越えて、幕末に徳川幕府を倒す原動力に繋がった。いやはや、兄弟(妹)愛は、実に300年もの時を越える力となりうるわけだ。何と素晴らしいかな。
あくまで一例だが、それらを考えてみながら、シスプリに触れてみよう。実に深い歴史浪漫を感じはしないかな? あれほど兄が好きだった義経の性格は咲耶に似ていたか? それとも意外と千影のようだったり・・・(笑)
まあ、それはともかくとして、シスプリの世界と、この12人の妹たちの存在は、人類が最も尊厳すべき肉親への愛情が詰められていると言っても、決して言いすぎではないはずだ。そして、彼女らを妹としてのみ捉えず、同性の兄弟・姉妹にも通じる物語でもあることを忘れてはならないと考える。
人気ランキング~順位序列……比較への批判
自分が一番好きなキャラクタを挙げれば、第四子の咲耶である。しかし、はっきり言えば、12人全員甲乙は点けられないと言うのが正解だろう。元々、どのキャラクタもそれぞれに秀でた部分もあるし、欠点もある。
企画しているG'sマガジンにこれを言うのも可笑しいのだが、人気ランキングなる順位序列は正直言って不愉快感を完全に拭いきれなかった部分があった。私としては特段気に入っている咲耶や千影が上位に位置していて悪い気はしなかったが、極端な話、人気は数の論議ではない。個人個人が一番だと思うキャラクタが、一番な訳である。それこそ、自民党の派閥のようなものではなかろうか。批判はするものの、結局、人気の数だけでそのキャラクタがトップとなる。それぞれ素晴らしいのに、数が少ないだけで下位となる。人に順位序列を点けることあたわずと叫ばれている昨今、ゲーム・キャラクター界にも同様と考えるのは間違いであろうか。その順位を見てどきどきハラハラ。シスプリだけに限らず、あまりいい感じではないなぁ。
失くしかけている人間関係を追随す
そこまで言うと大げさであり、世界が違うと言われるかも知れないが、シスタープリンセスには兄妹という概念を通じて、現代社会に根付いている、人間疎遠化現象に、一つの楔を打つものではないかと考えるのだが、企画者であるG'sマガジンや公野氏、ましてや天広氏はそこまで考えているだろうか、いやいや、ただ私がそう思いこんでいるだけなのかも知れない。
ゲームに限らず、関連書籍を垣間見るに、ブラコンやらシスコンやらと、まあまあ見ようによっては散々な言われ方をしている。両極端の意見は、人気作には必然なので、それはそれでいいだろう。
ただ、それは目下思いすぎ、極端な錯覚なのではあるまいか。「仲良きことは美しきかな」などと良く言われたものだが、この作品に写される兄妹像は、決して恥ずかしいブラコン・シスコンではなく(と言うよりも、私自身、この作品においてこういった表現は好きではない)、実に、人間関係の本質、親兄弟にまで及ぶ、関係疎遠・孤立化に警鐘を鳴らすものだと考える。ただし、一人のめり込んではいけない。シスプリが好きならば、その良さを惜しげもなく世間に広げるべきである。シスプリという物語が裡に秘める本質を見いだしてこそ、真のファンと言えるのではないだろうか?