Girl Games Essay by To Heart

何故か無性に“いい奴”なるTHの主人公

藤田 浩之

▼高校生という設定なのだが…?
これを言ってしまえば反則かも知れないが、どうもこういった主人公とヒロインたちのやりとりを見ていると高校生らしからぬ部分がつぶさに現れているのが判る。
ちなみに藤田浩之を初めとする主立った取り巻きは15~17歳。まあ、現実のこの年はそれ相応に大人びているのかなと考えればそれまでかも知れない。
有名なイベントとしては、前述したHMX-16型マルチに対する頭なでなで。
16歳の少年がまるで父親のように幼い娘の善行を褒めそやすような行動は、16歳という設定すら一瞬あやふやにさせてしまう。
もともと、主人公に感情移入させるプレイヤーの対象齢が実年齢を越えているのだろうが、第3の視点から見れば、ヒロインたちに対する浩之の言動は違和感がある。よく言えば、出来過ぎた高校生か。
当然だが、ほとんどの言動はいかにも少年らしいずけずけしさと、短気な面で示されているのだが、とかくヒロインたちの心情に関わる部分ではアンバランスな大人さを持ち、良くも悪くも困惑するのだ。プレイヤーたちがあるいは持ち、あるいは気がつかない心の部分を、所々に顕わしている少年の平均像が、藤田浩之というキャラクタなのかも知れない。
▼藤田浩之についての考察
ストーリーの設定や舞台状況にも因るのかとは思うが、私自身としては藤田浩之というキャラクタは気に入りつつもあまり感情を移すようなタイプではなかったというのが総論である。
まあ、人それぞれの価値観の違いである訳なのだが、どうしても先だって触れたOVAの影がつきまとっているためなのかも知れない。
To Heartファンの方々にお詫び申し上げる。
▼何でかなぁ?
THに限ることではないと思うが、恋愛ものの主人公は、「意味もなくもてまくる」とか、無性に“いいやつ”が多い。お節介焼き、冷たくあしらう中に見え隠れするさり気ない優しさとかね。
To Heartの主役・藤田浩之を見たのは、プレイステーション版を基にしたOVA。友人がCSで録画していたのを拝見したときである。
To Heartの噂は良く耳にしていたのだが、作品自体はプレイしたことがない。ましてやプレイステーション版への移植の原点、PC版はその存在すら知らなかった。
その話はともかくとしても、そのOVAの藤田浩之は兎にも角にもいい奴に徹されていた。ヒロイン神岸あかりを差し置いて、HMX-16型マルチに対する、頭なでなでイベントに代表されるように、なるほどこれぞ理想のヒーロー像と言った感覚。
▼平等イコール無神経
藤田浩之にプレイヤーである自身を感情移入させれば何の問題も生じなかった。だが、To Heartに触れたきっかけがいけなかった。
OVA版の藤田浩之のイメージが強く、「デートの最中に、他の女の子への贈り物を買う」という行動が許せない部分があるわけで、しかも相手が変わるたびに妙につぼを突くだろう気遣いや優しさを見せる。現実、そんな男はいないなと思いつつも、浩之自身の失態が希薄だった点が無性にいらつかせているのかも知れない。いや、矢島君や橋本先輩があまりにも無能な立ち回り役で、佐藤雅史も期待以上の活躍をなしておらず、終始浩之の良さを通したストーリーだからなのかも知れない。

神岸 あかり

▼現実にはなき一途さを持ち合わせたヒロイン
とある雑誌の寸評において、神岸あかり像についてこんなものがあった。
「今どき好きな人のために、何かをしてあげたい、ご飯を作ってあげたいなどと健気に思いつづける女の子は、国宝級の貴重さである」
なるほど。言われてみれば、確かにその通りではある。古き良き日本女性像とまでは言わないが、こういったキャラクタに対する男性たちの羨望感というのは、いつの世になっても変わりはしないんだろうなあと思ってしまうのだ。
とにもかくにも一途に主人公・藤田浩之を慕いつづけ、突き放されようがどつかれようがめげることはなかった。ちなみに私の簡潔な神岸あかり像は『とにかく我慢強い』
▼名言「浩之ちゃん」
『To Heart』のヒロインを語るならば、まず思いつくのは主人公の呼称であり、名言となった「浩之ちゃん」であろう。
まあ、いかに幼なじみとは言うものの、高校生にもなって『ちゃん』付けで呼ぶのもどうかとは思うのだが、なかなかどうして、プレイヤーのつぼをしっかりとついているではないか。
まあ、仮に現実において自分も『ちゃん』付けで呼ばれたらさすがに怒るだろう。まあ、自分の場合は小さな頃から顔見知りの近所のおばちゃんやおじちゃん連中からは未だに時々『ちゃん』づけで呼ばれることもあるが(笑)
▼王道パターン
『幼なじみ』という設定は恋愛物語では白米・味噌汁のような存在となった。確かにそうそう現実においてもこのような『幼なじみ』という存在はないとおもうのだが、まあ、それはよしとしよう。
神岸あかりはドジ・トロイ・ロマンチストという、まあこれもよくあるというか、どこかで聞いたようなキャラクタなのだが、行動のひとつひとつがあからさまに浩之ちゃんべた惚れの感があるから、もうひとつ引きがあればまた良かったのではないかなあと思ってしまう。甘いケーキばかり食べていると飽きてしまうといった感じ。
▼利用された矢島君
神岸あかりのストーリーを進行してゆくうちに、矢島という同級生が絡んでくる。あかりが好きだから、告白の膳立てを浩之ちゃんに頼みに来るわけなのだが、矢島君にしてみれば頼む相手を間違ってしまったと言うほかない。と言うよりも、頼む相手が浩之ちゃんしかいなかったという感じなのだが、結局、矢島君の行動はやぶ蛇以外の何物でもなかった。まんまと浩之ちゃんの策にはめられた...というよりも、自分のしくんだ策に自分がはまったとでも言うのだろう。さんざんに利用されたあげく以後、登場しない。
結局、浩之ちゃん自身があかりに対する気持ちを自覚してしまったのでめでたしめでたしなのだが、いまいちだったね、矢島君。押しが足りないっす。と、いうか、もう少し彼にはがんばっていただき、あかりが矢島君に取られてしまい、浩之ちゃんがさながら名画『卒業』のダスティン・ホフマンを演じるパターンがあっても良かったかな?
▼魏を囲んで趙を救う!?
神岸あかり自体は浩之ちゃんの事は好きなのですが、幼なじみから恋人に変わるというパターンはいつの世でもやはり困難なようで、『魏を囲んで趙を救う』、『遠交近攻』のたとえよろしく、あかりを『攻略する』というよりも、浩之ちゃんを攻略するという感じがあった。他者を利用して浩之ちゃん自身の垣根を崩してゆくという、一種の攻城戦ゲームのようなスリルがあるわけがねーだろ!というひとりボケ、ひとりつっこみはともかくとして、何も『To Heart』に限らず、すべての恋愛ゲームにおける、『幼なじみのヒロイン』は、彼女を攻略するのではなくて、『主人公自身』を攻略する、一種の自虐的おもしろさが含まれている気がする。これを言ったら反発を食らうだろうか。
▼そこまでするか!
たぶん、PC版『To Heart』は伝説化されているだろう。高恋愛における流れが全く違和感がない。PS版が一世を風靡させた着火点となった昨今、PC版の『To Heart』はETC高恋愛の中央公路を堂々と歩んでいた。まあ、その話はREVIEWでするとして、あかりとの場面はその性格・容姿とかなりギャップがあって、プレイヤーによっては衝撃があったのではないだろうかと思わされる。かくいう私自身もその一人ではある。
まあ、それもあかりというキャラクタが持つ、浩之ちゃんへの愛情をストレートに表現されていたことは実に見事であった。

松原 葵

▼純真少女は天下無双の武道家
四月組では最も容易にストーリーが進行するキャラクタであろうと思われる。入学早々『格闘技同好会』設立に向けて同士勧誘に休憩時間を割くほど、実に健気な登場をなす。
さすがは異種格闘技に精通しているために勧誘キャッチフレーズは所々専門用語を羅列。当分野に疎い私としてはいささか想像がつかないものがあったが、彼女の熱意がひしひしと伝わったことは確実だ。
ギャラリーがなくなっても熱弁を振る純真な少女の前に現れたのが、購買のパンを蹴ってやって来た『いい人』藤田浩之というわけ。ああ、何とおあつらえ向きなのか。
▼DREAMS COME TRUE
オカルトに興味を持つやら超能力に興味を持つやらと様々な趣向を持つ浩之が葵との約束通りに場所へ向かうと、一心不乱にサンドバックをたたきつける姿を目にすることになるわけだが、それは思春期の鬱積したストレスを発散しているわけでもなし、いやな奴の顔写真を張り付け、回し蹴りを喰らわしているわけでもない。
エクストリーム大会出場に向けての孤独なる鍛錬。夢に向かうひたむきさに浩之自身感銘を受けてゆくわけだが、後日談、浩之に巡り会えなかったら葵の努力は南柯の夢に終わっていただろう。これぞ正しく運命の巡り合わせ。当初は支えてくれる浩之に対し、先輩として純粋に尊敬し、慕っていたのだが、やがて恋愛感情へと発展してゆく。清流派の王道をゆくストーリー。
▼妹にしたいキャラクター
四月組の三人の中で、きわめて普通なのが葵。人間であるし、超能力者でもない。健康で一途な愛らしさを醸し出す。恋愛物語の妹にしたい理想キャラとしては、THから松原葵を推薦。順当無難な路線ですか(笑)
▼葵 窮地に神智を顕わし 坂下 崩拳に仆る
さてさて、スポーツ少女がらみの恋愛ものといえばお約束のスポ魂とくるわけです。
空手部への引き込み工作に失敗し、何かと無理難題を押しつけてくるのがホープの坂下好恵という人物。エクストリームへ奔った葵に対しついにたまりたまった鬱積と、自分の方が強いはずだから、勝負しろ!と果たし状を突きつける……なんとまあ、ベタベタのお話。
浩之と並び、葵が憧れる武道家・来栖川綾香(参照)を仲裁に立てるがかえって自体はこじれてしまい、結果ただの力比べだったはずの坂下との試合が天王山となる。
当然、葵はそれほどまでの覚悟は決めていなかったために苦悩の縁に落とされてゆくのだが、さあさあそこで我らがヒール...もといヒーローの藤田浩之の出番。
さんざんの美辞麗句・慰撫の言葉並べ連ねて葵の迷いを払拭させてゆく...のだが、言っていることは至極当たり前のことなんで、結局のところ、大好きな浩之の言葉聞けたことに葵は満足だったんでしょう。
来栖川綾香を審判に試合は一進一退、最後は坂下に追いつめられるが、浩之の声に底力が目ざめた葵、無意識に繰り出した活意拳なる崩拳を繰り出し逆転勝利となった。ばりばりのスポ魂!『わかっちゃいるけど止められない』という植木等のフレーズや煙草のたとえよろしく、なかなかどうしてストレートに面白いですなぁ。『せんぱぁ~いっ わたし...勝ちましたぁ~』などと泣きながら浩之の胸の飛び込む場面、大概の『お兄さま』たちはこいつにやられたでしょう。かくいう私はすんでの所でストップ(笑) マルチに続き、崖っぷちから危機一髪という感じだったです(爆)
▼オヤジかアンタは? (笑)
葵から告白された後の浩之の行動はマルチの例よろしくただのスケベオヤジと化してゆく(爆)
流れ的に見てもどうしても、どう見ても純真なる15の少女の言動はその気はなさそうなのに、浩之はほぼ我欲のまま突き進んでいる。まるで腹の減ったオオカミか、ロリコンじいさまそのままの行動。
エンディングでは身の程をわきまえず葵と勝負するが見事返り討ち。痛さの仕返しとでも言うのでしょうかね。とかく、前半の好印象と60度違う後半の浩之。...って、ただの浩之批判になってしもうたわい。
ま、多分この後は葵の教授の下でそれなりの技術を会得したんだろうが、何かがずれたまま永遠に幸せを築いていった風変わりのカップルとなったことでしょう。浩之よ、人は若いと思っていても、若さは永遠ではないぞよ(経験談)

姫川 琴音

▼超能力少女推参!
非現実を求めるならば…という感じで超能力少女姫川琴音ちゃんの登場となる訳ですが、物語終盤の四月組の中では一番、難攻不落ではないかと思われます。
自閉症・心身障害といってしまえば極端すぎるかも知れんが、初登場がいかにもっ!って様相あり。
更には琴音自身の出生の秘密にまで話が発展してファンタジー化に一層箔がつく。そんなことはどうでもいい!俺は琴音ちゃんが好きなんだ~!という浩之の叫びよろしく私は琴音について語ろうかのう。
▼予知能力=二重人格?
『公孫勝 術もて高廉を破る』。アウトローのたまり場の代名詞・梁山泊の基になった中国伝奇小説・水滸伝で妖術使い公孫勝が、敵の妖術使い高廉と戦って破るという話がある。
なんで水滸伝が出てくるんや?という疑問は正当。公孫勝は妖術使い、つまり超能力である念力の達人であった。『念力』を、戦略を見通す『予知能力』として梁山泊の軍師となった感がある点が、琴音と共通する。こじつけがましいが史書が大好きな私の解釈ゆえにお許し願おう。
とある公園で浩之と話す琴音。そのとき、懐かれた仔犬の事故を「予見」。さながら『琴音 術もて仔犬を救う』という一節よくし、トラックにはねられても一命を取り留めた仔犬に内心安堵。だが、予知が念力でもたらしたものとなると、琴音の深層心理にある『残虐性』がつぶさにかいま見ることが出来るイベントに相違がないわけだ。
ともすれば、『おとなしくて従順、放っておけない可憐さ』をたたえる彼女は実は残忍さを秘めた魔性の女であるのではないかと言ってしまえば、琴音ファンからお叱りを受けてしまうかも知れない。
▼超能力あったればこそ?
THはPS版を基にしたOVAでも見たことがあるのだが、初めて琴音を見た瞬間、『エ○○ンゲリオン』の『綾○レ○』じゃないかと勘違いしてしまった(笑)
よく見ると全然違うんだが、ヘアスタイルがどこかにているとは…思いませんね。
とまあ、そんな余計なことはともかくとして、基本的に琴音のお話は超能力抜きじゃはっきり言ってヘボいものだと思われます(ファンの人、ホントに御免)。
まあ、この手のキャラクタは感情移入させるには相当難しい技術が要されるから、結局超能力といった非現実の素材をつぎ込む以外手っ取り早い手段はないと思われますけどね。
まあ、判っていたこととは申せ、前述した琴音出生の秘密が明かされたときに、期待していた分半ばがっかりとした部分があるわけ。ただし、琴音のキャラクタ像自身は気に入っていますがね。
要するに、SF指向のストーリー。なまじはっきりしない展開にイライラする純恋愛物語と比べればかなりいいお話には違いがありませんな。そう言った視点から見れば、すごくいい。
▼浩之 身を擲(なげう)ちて怪奇を解く
自己嫌悪に苛まれる琴音に、例によって『いい奴』浩之の懸命の解決にも疑いを晴らせない琴音。
さすがの浩之もいらついたのかは知らないが、決死の覚悟でダイビングまでしている。これぞ愛のなせる技なのか、まずはあり得ないのか。仮に現実にあったとしても私は浩之ほどの勇気はないと断言しておこうと思う。まずは“弩”がつくほど浩之は『いい奴』なんですなあ。
結果、この直後に琴音は浩之に身を捧げてゆく訳なんですけど、出会いからひと月も経たぬうちに結ばれるなど、例の三年かけてようやく告白……と言った某物語から見れば考えられない状況。まあ、ひとえに現実とはそういったものなのかも知れませんがね。
▼琴音 能もて恋人を呪縛す(笑)
さて、エンディングにおいては性格が一転、明るいキャラとなって浩之の家でご飯を作る買い出しの場面にてフェードアウトしてゆく。頬笑ましい劇終ではあるが、さあさあ超能力を持つ可愛い恋人を得た浩之の恐怖は未だ始まったばかりか。琴音の二次創作を予感させる二人のその後は別の話として、浩之はそうそう浮気は出来ませんな。もしもばれてしまったり、感づかれてしまった暁には階段で転倒するだけではすまされません。命が大事ならば一途に琴音だけを愛してあげましょう。
ああ、合掌、合掌...南無阿弥陀仏...

HMX-12型 マルチ

▼マルチスト誕生
未だに人気が廃れないマルチは完全に『TH』のヒロインの座を奪取した感じがするわけであります。
確かに、このストーリーはハマるでしょう。世に言う(言うのか?)、マルチストは頭なでなでで無上の喜びを得るその姿にノックアウトされたのではないだろうか。う~む。さすがですな。冷静な視点から見ればこのキャラクタはただの○○○○○○になるのですが、如何せん彼女は人間の『心』をわきまえているわけですからね。主人公・浩之もむかつくほどいい奴でして、マルチのことを普通の女の子として見てくれてました。『心』を持つマルチが急速に惹かれてゆくのも至極当然のことです。
かくいう私はというと、あと一歩寸前で歯止めがかかりました(笑)レビューを掲示する身がワンキャラクタにのめり込むのはよろしくないので(誰が決めた?)。ただ、マルチのストーリーは本当に素晴らしいです。
▼失われた人心への警鐘
さて、このマルチはただ単にプレイヤーの深層心理を揺さぶるだけのキャラクタだったのか。
よく見てみよう。学校の校門前で元気よく通学する学生たちに「おはようございます」と挨拶する姿があった。
果たして、現実の人間にここまで出来る者はいるだろうかと、この場面を見て無性に胸が痒くなったのを憶えている。使い走りや押しつけられた掃除当番。心配する浩之にマルチは言う。「人間が好きだから、その役に立ちたい」。
まあ、設定がメイドロボットといってしまえばそれまでだろうが、マルチを通して、保身・身勝手さを持つ人間たちに対する、心の警鐘を鳴らしてくれたキャラクタに映ったのだ。浩之ならずとも、マルチを助けてやりたいうというプレイヤーの気持ちはよくわかるわけだ。
▼セリオもまたよしかな?
お堅い話は私の得意な分野で申し訳がない。ま、それはともかくとして、マルチと対を成すセリオというアンドロイドの存在が意外にも光っていた感がある。
ただ厳密に言えば、このマルチと姫川琴音(参照)のストーリーは完全にSFの世界が入っていて、現実感が伴わないのが難点。現実、マルチのようなアンドロイドが存在し、売買が始まれば、国連あたりが人権問題だと大騒ぎするだろう。クローン人間が廃止されたように、アンドロイドの制作はSFだけの世界にとどまるような感じがするわけでして...って、またお堅い話になってるやん!?
もといもとい。
世の中は広いから、意外とセリオのようなキャラクタが好きな人もいるでしょうな。あっっと!ただし、ビジュアル面を除いてね。確かにセリオは長髪ですが。
▼『ご主人様』は反則です(笑)
マルチストに対してとどめを刺したのが、このセリフですね。いやはや、『ご主人様』は反則でしょう。せめて『お屋形様』くらいにしておけばって、どうしても時代劇調に走ってしまう高原(爆)
まあ、老舗の何たらであれば『ご主人様』も通例でしょうし、同世代の少年ならば『若旦那様~』でしょうかね。くだらないことはともかくとして、『だんな様』と呼ぶよりも、『ご主人様』と呼んだ方が、許容範囲はぐっと広がり、いち民草である私たちが抱く、『支配欲』を見事にクリティカルヒットさせたと言わざるを得ません。
▼鬼畜・藤田浩之
PC版のマルチのストーリーにおける浩之ははっきり言って鬼畜です(笑)
いやいや、鬼畜と言うよりも、言動が色好みのオヤジと化してしまっています。PS版では当然、そんなことはないでしょう。『ご主人様』と呼ばれてその気になってオヤジ化したのか。それよりも頭なでなで自体からすでにオヤジ化してしまっているのか。
マルチ自体が中学生以下に見えてしまうので、浩之はやはり鬼畜と言うことにしておきましょう(爆)

宮内 レミィ

▼諺・故事成語に精通した留学生
名前を別にして、頭髪が金色ゆえに外国出身の女の子ということだが、そうなると赤や紫、青・緑はどうなるんだ?などというどうしようもない疑問はさておこう。
宮内姓を名乗ることからハーフであることが判るのだが、容貌は完全にメリケン人(古語)である。
完璧に近い日本語を駆使(英語ばかりじゃわからん!)し、諺・故事成語に精通した(と言ってもハマっているらしいだけだが)、風変わりな面をもっている。ただし、レミィの発する諺は一部間違っているので、注意しよう(笑)
▼想いを素直に表現
日本の美徳を熟知しながらも、さすがはメリケン人。曖昧な表現を使わずにストレートに浩之に対して積極的アプローチを仕掛けてくる。その様は端から見ていても気持ちがいい。
だが、当の浩之は余計な詮索をしつづけ、一部レミィをやきもきさせるのだが、とある事件をきっかけにようやく彼女の想いに応えて行くことになる。ただ、かなり重要なイベントなので、このレビューではその事件に関しては触れないでおこう。
▼お約束?
藤田浩之のオヤジギャグは、レミィのストーリーで遺憾なく発揮される。一応、アメリカンジョークに擬した言動らしいのだが、レミィはあっさりとそれをかわしてくれる。
特にファミレスでのバイトの場面ではさすがと思われるほどのやりとりをしてくれるのがまたよし。
ちなみに私はオヤジギャグは結構好きな方であったりする(笑えたりはしないが)
▼意外なる接点あり
これぞ恋愛物語の醍醐味というものなのか。レミィと浩之は意外なる接点があった。それが明かされるまでは全く予想だにしなかったこと。長岡志保の会話の中でそれは出てくる訳なのだが、それがまたなるほどと、唸らしてくれる。
▼緊急帰国――――そして
レミィのストーリーは後半に急展開するので、自身としてはなかなかレビューが書きづらい(汗)
一応留学生という設定上、終盤やはり突然、お国に帰らなければならなくなった……という展開が満を持して待っている。
ここがこの先どう転ぶかの最大の分岐点。創作活動においても、似たような場面が生じたとき、どちらを選ぶかによって冷めるか冷めざるかになってしまう。
つまり、そのまま帰国し、浩之(もしくはレミィ)が数年経って逢いにゆくか。帰国が取り止めとなり、ふたたび浩之と共に楽しい日々を過ごして行くか。
難しいですね。どちらも結局ハッピーエンドになるんで、プレイヤーの心境次第と言うことになるわけですが、ただ、青春の想い出となった……という結末では話になりませんね。まあ、長岡志保の場合は浩之との関係上、その話の方が個人としては好きなんですが、レミィの場合は重要なイベントがあるわけですからね。ハッピーエンドにならざるを得ないと感じるわけ。
▼個人的な願望(笑)
ハンターの血が騒ぐのか、浩之曰く禁断症状なのか、時々レミィは弓矢をつがえてぶっ飛んでしまいます。浩之も獲物に間違われ、二度ほどその標的にされかかる訳なんですが、個人的要望としてはいつでも浩之のことを撃ってくれと(笑)まあ、あくまで冗談なんですが、どうもレミィのみならず、全ストーリーを通じて浩之像は無性にいい奴なんで...
って、これじゃあただの嫉妬ではないか(爆)

来栖川 芹香

祈り -dreams in love-
Lyric by Sora Takaharano
Referance Music by "さよならの水彩画" from Hideaki Tokunaga
孤独を覚えた夜 午前0時の街
窓の外流れてゆく 車のライト

「そばにいてほしい」と
願う言葉 虚しくて
うち消された 夢のかけらを
帳に そっと 投げる

恋ははかない朝露のように
輝き 消えてゆくけど
そっと 瞳を閉じて
眠りにつく君は今 しあわせ見つけ

すべて捨てても かまわない
dreams in love

涙で濡れた枕 胸に抱きしめたら
寂しさを慰める 夢へのドアが開く

恋はそう いつでも突然に
燃え上がる炎のように
きっと 不確かだから
憧れてゆくのだろう

運命の出逢いを 信じつづけて今も
dreams in love

恋ははかない朝露のように
輝き 消えてゆくけど
そっと 瞳を閉じて
眠りにつく君は今 しあわせ見つけ

すべて捨てても かまわない
dreams in love
▼オカルトマニアの名門令嬢
HMX12型マルチを制作した来栖川電工等のグループ関連会社を総統括する来栖川会長の孫娘という、これも良くありがちな大財閥の御令嬢。その妹には武道家・綾香がいるわけだが、その話は後に取っておこう。
来栖川芹香は浩之にとって一学年上の先輩になるわけだが、出会った当初から一方的にタメ口をききつづけている。先輩とわかっていながらもだ。浩之は礼節をわきまえていない!(笑)
とは言え、当の先輩こそ浩之に対して(限らないとは思うが)敬語を用い、対応も腰が低い。これぞさすがは良家のしきたりを思わせる気品とでも言うのだろうか。
趣味も黒魔術・呪詛・占卜等々と、陰陽師安倍晴明顔負けのオカルトマニア。だてではなく学力も優秀というのだから恐れ入る。
▼全編セリフほとんどなし
先輩はそのストーリーにおいて言葉らしい言葉はほとんどない。「……」でのみであり、浩之が代弁するわけであるが、それでここまでのストーリーを発展させるとは素晴らしい。
言葉を失ったわけでもなく、極度の対人恐怖症というわけでもなさそうで、ぼうっとしている天性の理由は執事のセバスチャンが後に明かしてゆく事になるのだが、その境遇は、幼児虐待とまでは言い過ぎだが、良家らしい過酷さをつぶさに感じ取ることが出来る。単刀直入・同情させられた。
▼気をつけろ!浩之
出逢いは絵に描いたような鉢合わせからである。遅刻しそうになって先輩と衝突、突き倒したのが始まり。それも二度である。おまけはその時落とした先輩の蔵書・オカルト本を届けに行ったときこそ序章。これぞ正しくドラマチックな邂逅とでも言うのだろう。ちょっとクサかったかなって感じだったね。
▼芹香 念を用いて雨を喚び 浩之 信を用いて雲を待つ
オカルトマニアの先輩なのですが、姫川琴音(参照)の物語とは一線を画して親しみやすさに終始している。冷淡視する周囲とは違って、自分の趣味に興味を抱いてくれる浩之に惹かれてゆく先輩。ある時、雨を降らしてみせるという事で浩之を屋上に導き、黒魔術の儀式に則り雨乞いをする。
しばらく何事もなかったが、一心に雨は降ると信じ続けた浩之。やがて小雨が一時的にぱらついた。
信念の勝利か、それともただの偶然なのか。それはともかくとして、実に胸が打たれる場面である。
▼純粋無垢なる深窓の姫君
私個人の感情で言えば来栖川先輩を一押しする。周囲からの印象である『奇特』さによる孤独感が、共感するとでも言うのだろうか。
雨乞いのイベントにつけ、オカ研(オカルト研究会)の見学勧誘につけ、浩之というひとりの人間との出逢いが、先輩の人生上、大きな岐路であったに違いないし、おそらくは自身の中で浩之こそ人生の伴侶であると知ったのだろうか。なまじ人間関係や世情の美醜を知らない深窓の姫に惹かれたならば、浩之ならずとも守りつづけたいと思うのは至極当然のことだろう。
一緒に帰りましょうと誘いに来た先輩、トイレが我慢できずに浩之は待っててくれとそのまま用を足した後、忘れてしまったのか帰ってしまう。自宅寸前にまで来たとき、ようやく思い出して急いで引き返す。もはや夕陽、西山の裾に隠れ黄昏となる頃、もういないだろうと思っていた教室前の廊下に先輩はぽつんと立っていた。数時間、浩之を待っていたという。浩之は胸を裁ち割られる思いに先輩を抱きしめていた。
う~む、これぞ清流派恋愛ドラマの真骨頂的展開。この瞬間から、浩之の意は決している。そして先輩派のプレイヤーたちもこの場面に大打撃を食らったに違いがない。かくいう自身もその一人。
▼誕生日はあなたと共に
劇終、先輩の誕生日にありったけの気持ちを込めて用意したプレゼント。二人きりのパーティもあつらえた浩之の誘いを、慚愧の思い満面に断った先輩。しかし、夜半に電話が掛かり先輩はひとり公園にて浩之を待つ。愛するものの腕に抱かれながらフェードアウト。
まあ、よくあるパターンだからこそ味わいが深いのだと言うことを感じさせるストーリーであった。

長岡 志保

▼切ない青春の1ページ
悲恋と呼ぶにはおこがましいかも知れないが、長岡志保のストーリーは、正しく青春のひとコマといった感じがした。
その天真爛漫さとミーハーな性格が終始貫徹されていて、ヒロ(浩之)との出来事をヒロ自身共々割り切っている点が気持ちいいと言えば気持ちが良く、プレイヤーによっては物足りないストーリーであったといえば、そうであろう。
自分は前者の方だった。恋愛物語において志保のようなストーリーはそうそう多くはない。だが、一番現実に近い、有り得そうな話という視点から見れば、彼女の話が一番であろうと思わせるのだ。まあ、その性格はちょっと極端でもあると思うが(笑)
▼楽しくなるかけがえのない親友
全部のストーリーにおいて良く絡んでくるのがさすがはヒロのスポークスマン(ってかなり意味が違うか)。
本当に無知なヒロに対し、真偽色濃くまざった情報を提供してくれます。
後の回想録で、「実はあの頃ヒロのこと好きだったんだ」と曰っているわけですけど、そんなことは傍目からみてもわかっていることではなかったでしょうかねえ。
ただの中学からの腐れ縁とはいうものの、ああも一日の大半近くをヒロに絡んできて「なんでもない」とは言い難し。
しかし羨ましいですな。ヒロ自身は煙たがっているようですが、こういった親友は一人くらいいても邪魔にはならないでしょうからね。
▼嘘のない清々しさと笑顔
志保は様々な意味で知ったかぶりをする反面、感情を隠せない性格のようでありました。何が原因か、異常とまでは行かなくともヒロに対するライバル心は他者の追随を許さないほどだ。
遊びに関してはヒロに一歩リードするのですが、勉強ともなると如何せんむき出しにヒロを敵視。ヒロに勝つ努力をするかと思いきや、ヒロを自分と同レベルに落とすためにいろいろと策を仕掛けてくる。ヒロと受けた補習には製図用消しゴムを刻んだ弾丸を飛ばしてヒロを挑発。いやはや、実に頬笑ましいというか、若さですなあと思わせる一場面。
▼橋本先輩
With You~みつめていたい~の橋本先輩とは正反対の好色漢がTHの橋本先輩。
今や古語となりつつある『コギャル』のイメージそのままの志保に迫る訳なんですが、『独活の大木』の理よろしく見せかけだけの勇傑。ヒロの回し蹴りに一撃で倒され、更に志保からの一撃にとどめを刺されるという情けなさ。挙げ句の果てに謝罪したヒロに馬鹿丁寧な挨拶をして退散する体たらくぶり。
THのヒロインたちにつきまとうわき役の男子というのはこういうのが多い(笑)
Withの橋本先輩のような人望あるひとかどの人物が様々に関わって来て、『藤田浩之 校門に坐臥す』のタイトル表すように三枚目に成り下がるような展開が欲しかったね。いずれにしろ、ヒロはいい奴です。
▼それはちょっと…
ヒロをいち親友で通した志保のエンディングは彼女らしいといえばそうかも知れないけど、ちょっとばかし無茶苦茶すぎないか?といった感じ。笑ってしまうと言うよりも、唖然としてしまったというのが率直な感想ですね。
本人は変わったと言っているみたいですが、何々、容姿こそは変貌したものの性格は至って変化なし。ヒロのために培ってきた『志保ちゃん情報』を飛躍させて世界を股に掛けるジャーナリストに転身。
青春のひとコマをヒロと演じながらも自分の道を邁進して行った風の少女に、幸多かれと願う次第。
ちなみに、この後、ヒロとあかりが結婚したかどうかは二次創作を参照。多分、志保のバイタリティに圧倒されて本当に結婚してしまったのかも知れませんね(笑)

保科 智子

▼孤高な心の内に見え隠れする一途さ
お約束のメガネっ娘、頭脳優秀な学級委員長は、保科智子さん。関西・神戸出身はその言葉なまりでわかりますが、厳密に言えば、河内弁だそうです。実際はあそこまで訛らないらしいのですが?
それはともかくとして、委員長は終始クールで走ってました。ポーカーフェイスとまでは言いませんけど、決して感情を表に出すようなタイプではありませんでしたけど、浩之に十数年来のつき合いである神岸あかりほど、我慢強くはないと思いますね。
委員長の心にある葛藤は一種の戸惑いのような感じなので、あかりの一途さゆえの障壁に比べれば、比較的壁は容易に乗り越えられたみたいです。
▼どこか気に入ったストーリー
委員長のストーリーは非常にというまでには行かなくとも、共感するというか、気に入っています。
『友情』について考えさせられたのもありますし、自分だけで悩みながらも、それを自分で抑えつけてしまうことの空しさ。人は一人じゃ生きてゆけないと言うことを思わせるような感じでしたね。
委員長のかたくなな態度にめげなんだ浩之の対応は見習わんといけない(笑)
当然というか、ある程度予想はついていた展開ではあったが、この手の気が強いタイプというのは一度素直になると歯止めが利かなくなるほど好きな人にベッタベッタとなってしまうわけでして、なるほど、終盤にはいると浩之べったりとなっていってしまいますね。直接的な描写はないけど、感じがそうです。
▼不撓不屈の女史
委員長にしつこく絡んでくる女生徒三人衆がいるわけですが、『三人寄らばかしましい』とはよく言ったものでして、現実でも女性というのはよく三人で連みたがるものですな。
まあ、それはともかくこの三人の女生徒がことごとく委員長に因縁を付けてきます。一応名前があるのだが、浩之自身も憶えていなかったらしい(同クラスなのに何という怠慢!)。それはともかくとして、委員長に対する嫌がらせは彼ら曰く通り、実に幼稚極まりないものであったわけでして、幼稚ゆえに委員長も鬱憤が倍増。『鴻鵠の志、燕雀いずくんぞ知らんや』と突き放せなかったのは、やはり委員長も十六歳の女の子であったわけですな。
▼二次創作に布石を残す真実
委員長が心を閉ざした理由は終盤に明かされてゆくわけですけど、関連したイベントはなく、彼女の話だけの流れなので、二次創作に大いなる空間が広がったという印象が強かったです。TH関連ではダントツ人気がマルチ、次席が神岸あかりなので、委員長関連の創作物はいつか読んでみたいし、描いてみたいなあとは思っているのですがね(笑)あっ、と。その前に関西弁を習得しなければいけませんか。
▼今日だけは素直になるんや
終始、第一印象を崩すことなかった委員長のエンディングは私なりにしっかりと押さえるところを押さえていたなあと感じたわけであります。
夏休みに浩之と海水浴に旅行するわけですけど、そのときに『楽しいか?』と訊く浩之に、委員長は『うん、すごく楽しい』と答え、さらにやけに素直だなあと怪訝がる浩之に返し、『藤田君といるこの旅行中は素直になるんや』とはしゃぎながらフェードアウト。ほのぼのしい結末だったので、結果オーライ。
ただ、浩之と結ばれたのはよしとしても、どうも「ココロのスキマ、お埋めします...」というどこかで聞いたフレーズよろしく一時的な激情で終わってしまうのではないかという危惧感が拭えなかった点が残念。

佐藤 雅史

▼もう少し絡みが欲しかった、無欲っぽい奴
このキャラクタ、私的には結構好きだけどなあ…。少なくとも、浩之よりは普通っぽくてそれなりに真面目そうで、やるときゃやりそうな感じがしますが。
PC版では完全に浩之像をかき立てるだけの役柄に徹してしまっている感じがしてならなかった。サッカー部のエースという事なのだが、それを直接描写する場面もなかったから、言われなければ印象がない。
まっ、主役を食ってしまうほどの活躍をされれば、それも困るというものなのかも知れないが、どうも浩之にいいように使われている気がしてならん。
サブキャラの宿命といってしまえばそれまでなのかも知れないが、一応は神岸あかりと浩之の幼なじみという事だから、それなりに三角関係を演じてくれるようだったら、面白みにあふれたかも知れない。
▼雅史とのED
あくまでも噂だったらしいのだが、雅史とのエンディング。
PC版だとかなり危険な状況になること必然だが、こぼれ話的感覚で、それがあっても個人的には面白かったかも知れない。
まあ、対象キャラクタとの進展がないまま、期限が過ぎると、雅史の笑顔と共にフェードアウトして行くのだが……。
▼鷹嶺は雅史派
PS版を基にしたOVAでの雅史は姫川琴音に惚れられると言うパターンだったような気がする。To Heartに触れたきっかけというのがOVAだったので、私は浩之よりも雅史のようなどこか爽やか無欲っぽいキャラクタを応援したくなる方なのだが。
容姿はサブ・友人設定でよく使われるタイプの女性のような感じ。性格も大人しい方で主人公から見れば弟のようなタイプ。人生相談とかはされるよりもする方という印象かな?
彼も関連キャラクタと進展させるストーリーがあるならば、OVAの通り姫川琴音あたりが、なるほど無難だったろうなあと考えるわけである。

矢島

▼やぶ蛇

浩之の同級生・バスケ部所属。なかなか二枚目なのだが、これが意外と奥手のようだった。
神岸あかりの事を気に入り、告白の機をうかがっていたところへ藤田浩之を通じて接触のきっかけを持つことになるのだが、頼んだ相手がまずかった。
それよりも、もともと浩之のことが好きなあかりだから、矢島君が独自に告白しても振られるのは目に見えるようではあるが、とりなしをしようとした浩之自身が、土壇場になって『あいつにあかりはやれねぇ!』などと、自分の気持ちに気がついてしまったのだった。
よかれと思って浩之に頼んだ矢島君。しかし、それがとんだやぶ蛇だった。結果、思いも叶わぬままに失恋し、表舞台から姿を消して行く、哀れなる存在。
教訓『自分のことは自分でけりを付けましょう。』

橋本先輩

▼勘違い

浩之たちの上級生。女たらしで有名というお約束の『いやな奴』。
長岡志保が最初、相当入れ込んでいたと言うが、いかんせん橋本先輩自身が何かずれた感覚のまま志保を我がものにしようとしていたのだから、どうしょうもない。初登場が志保に対するセクハラ。
結果的に現場を押さえた浩之との喧嘩で一撃を喰らってダウン。更に激怒した志保の回し蹴りでとどめを刺された哀れなる存在。結果として志保と浩之の仲を発展させたばかりか、浩之に畏怖し、馬鹿丁寧な言葉遣いで挨拶するなど、七転八倒な無能さを発揮。以後、登場しなくなる。
With You~みつめていたい~の橋本先輩のように周囲に気を配りながら菜織への思いにあくせくし、一歩退いて支援して行くようなキャラクタだったならば、また別の意味で浩之の引き立て役になっただろうが、あまりにも情けない立ち回りだったので、登場場面の少なさ以上にイメージはない。
教訓『勘違い 時には大きな 命取り』

岡田・松本・吉井

▼結構気に入っているんだけど

浩之たちの同学年、4月から同級生になる。委員長・保科智子を執拗に敵視する三人衆。
岡田は外見通り気が強く、松本・吉井はどちらかというと小心。『女三人寄ればかしましい』という理にもあるように、現実、女というのはよく3人で連むものである。こいつらはその典型か。
また、『3人寄れば文殊の知恵』と、諺マニア・宮内レミィが言いそうだが、文殊の知恵どころか委員長に対する嫌がらせの策は実に姑息で幼稚なものである。浩之に看破されて怒鳴りつけられることになるのだが、岡田だけが開き直り浩之に食ってかかるも逆に一喝されてしまう。松本・吉井があっさりと降参し、浩之の言われるままに後に委員長に謝罪することになった。
立場的には分が悪いのだが、高原は結構こいつらは気に入っている。To Heartのサブキャラの中では、男性矢島君、女性3人衆だ。
何か、委員長ひとりに3人がかりでも敵わず、あまつさえ委員長の一喝に尻込み。その嫌がらせ手段の程度の低さ。いやはや極端かも知れないけど、現実問題、この3人衆のような人間が世にあふれているんだろうなあと思うと、妙に親近感がわくというものです。

来栖川綾香

▼PC版サブキャラに徹す
松原葵のストーリーでは素性が知れなかったが、来栖川芹香のストーリーで、その妹であることが判明する。まあ、外見からして判断はつくのだが。
PS版では恋愛対象になるのだが、PC版ではあくまでサブキャラ。エクストリームの達人で、松原葵と坂下好恵の対戦をあおりにあおる非情(?)な性格がうかがえる。
姉は無口なオカルトマニア。妹は明朗な格闘技マニア。生い立ちが違うとは言え、双方とも実にかけ離れた趣味を持つところがさすがは姉妹という感じがする。
綾香の武勇伝は葵の会話中にだけ存在。芹香のストーリーにおいては姉想いの妹という役に徹しているため、印象こそあるものの、物足りない感じが否めなかった。PS版で攻略対象になった理由も納得できるわけである。

セバスチャン

▼来栖川家執事、忠節漢は元無頼
来栖川芹香と仲良くなる度にその関係を阻止しようと立ちはだかる白髪の老紳士。口答えすると一喝が飛ぶ。
主家の為ならばと身を呈す立派な人物なのだが、いかんせん浩之にとっては邪魔な人物に他ならない。物語が進行して行くうちに当然、浩之を理解し、芹香の過去を話すようになる。
セバスチャン自身が来栖川家の執事になる経緯も話すが、かいつまんで言えばそれまでは無法者。来栖川家に拾われた恩義で仕えつづけているという世にも希な律儀者なのであろう。
来栖川家自体も古風な家柄と見たので、セバスチャンのような人物ならば、安心して令嬢・芹香を任せられたのだろうと思われる。自身も、セバスチャンはお気に入り。