第7話 知将出馬

「マルス様、私やはり不安です」
 ラディの案内でルーシが住むというワーレン郊外の素朴な田園風景に差し掛かると、シーダが不安そうにそう呟いた。
「何がだい?」
 優しく声をかけるマルス。
「そのルーシという人が策を練り私たちを動かしたとしても、もしも失敗してしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます」
 その言葉にアベルが大きく頷きながら口を開いた。
「シーダ姫の言うことは最もです。王子、ルーシという奴、頭から信じてはいけません」
 カインもアベルに同調する。
「何事も慎重に、事を運ばなければ・・・。全軍の命運を左右することだからな」
 マルスは小さくため息をついてから優しい声で返した。
「三人の言うことは理にかなっているよ。・・・だけど、敵の策を見破り、軍をよく導いてくれる軍師がいないと、私達はこのままこのワーレンで滅んでしまう。・・・せっかくパレスを目前にして、こんなところで滅んでしまっては何の意味もなくなってしまうじゃないか。・・・ルーシという人物がどれほどの才能を秘めているかはわからないけど、可能性があるなら賭けてみようじゃないか」
「・・・・・・」
 不安な眼差しでマルスを見つめるシーダ。やや渋い顔つきで互いを見合うカインとアベル。マルスは笑いながら冗談混じりに言った。
「それに、私は妙に頑固なところがあるからね。一度決めた事って、やり遂げないと気がすまないんだよ」
 そうこう言っているうちに、粗末で小さな家の前でラディの足が止まった。
「マルス王子、ここです」
「うん・・・」
 マルスは顔を上げて建物を見回す。そして襟元を正してからゆっくりを足を進めた。
 扉を数度ノックする。すると、おもむろに扉が開かれた。そして、若年寄と呼んでも不思議ではない、ひげをたたえた若者がマルスの視線とぶつかった。シーダは自分とさほど自分と年の違わないであろうその青年の姿に驚きを隠せず、カインは自分よりも老けてさえ見える彼の雰囲気に愕然とし、アベルは怪しげな男に警戒し、腰に佩かれた剣に手が伸びる。
「あなたがルーシさん・・・ですか?」
 マルスはやや戸惑いのまじった声で尋ねる。
「あなたは・・・?」
 ルーシは怪訝な表情でマルスと背後の三人を交互に見回した。
「初めまして。私はアリティアの王子マルス。アカネイアを滅ぼしたドルーアを追討するため、王女ニーナ姫を守護し、パレス奪還を指揮する者にございます。ルーシさんのご高名を慕い、ワーレンを攻撃するグルニア軍を撃退する策を乞いに参りました」
 軽く頭を下げて名乗る。
「あなた様が解放軍の盟主殿ですか。これは驚いた」
 ルーシは慌てて前に進み出、跪いた。そして、目を見開きマルスを見る。まさか、こんなにあどけなさが残るような優しい容貌の少年が、解放軍十万の軍を指揮する司令官だったとは予想だにしなかったからである。
「何をされますか。お立ちください。突然の来訪、ご迷惑だったでしょう」
 マルスはルーシの手を取り、立たせる。なおもルーシはうつむき加減に拝礼をした。
「私はここワーレンの隠者ルーシです。
「この者たちは私の仲間であるアリティア宮廷騎士団のカインとアベル。そして、タリス王女のシーダです」
 マルスが紹介をすると、ルーシは彼らにも恭しく拝礼をした。
「どなた様も噂に高き将軍の方々。お会いできて光栄です」
 三人は意表をつかれて呆然となった。驕慢な男だと思いこんでいたので、この恭謙な態度には不覚にも毒気を抜かれてしまった。

 家に通されたマルスたちは外観とは裏腹にきれいに整理された部屋に更に驚かされた。書棚には無数の書籍・古文書が陳列され、机の上には円球に地図が描かれ、その円球が回転する機械。そして両腕を広げたほどの筒状の棒が三脚で支えられ、窓の外に向けられているもの。マルスたちはそんな奇妙な物に気を惹かれてしまったが、ルーシの呼びかけにすぐに我に返った。
「して・・・解放軍の盟主殿ともあろうお方が、この片田舎の隠者ごときに、どのようなご用なのでございますか」
「私達はパレス奪還のため、諸物資を調達するためにワーレンへ立ち寄りました。しかし、私達の動向はグルニアの黒騎士団に見破られ、その増援軍がワーレンを目指して進軍を開始したのです。我々はこれを迎撃すべく軍を進めましたが、敵は大軍。真っ向から迎え撃てば敵味方とも損害は甚だしい。ゆえに北の盆地へ続く峠道に重騎兵を配置し、伏兵をもって敵を迎え撃とうとしたのですが、逆に敵の伏兵の策に掛かり大敗を喫してしまったのです。この敗戦以来、身動きがとれず、遂には退却を余儀なくされました・・・」
 マルスの話にルーシは何度も頷きながら、むうと唸る。
「ひとえに申し、この敗戦の責任は私にある。このままではニーナ様に申し訳が立たない・・・」
 泣きそうな口調で切々と語るマルス。シーダが慰めるようにマルスの背中に手をさしのべる。
「・・・敵は策士を用いており、私達はその策にまんまと掛かってしまったのです。それも我が軍には策士がなく、武勇や魔法にのみ頼り、いたずらに戦ってきたに過ぎないと痛感しました。今の私達に足りないのは人の知謀です。ルーシさん、どうか私達にそのお力、お貸し願えませんでしょうか」
 頭を下げるマルスに愕然となるカインとアベル。
「王子、何をなされますっ」
「盟主殿、何をなされますっ」
 カインとルーシの声が重なる。マルスを命懸けで守ることをプライドとする誇り高き勇士アベルは、主君が怪しげな男に頭を下げる姿に、憤りを越え、屈辱にまみれた感情を抱いていた。だが、ルーシの方がそんなアベルの心情を察したかのように口を開いた。
「三軍を統べる盟主ともあろうお方が、私のような下賤の者に頭など下げてはなりません」
 アベルは先に言われ、開きかけた口を閉じる。
「それでは不才ながら私の所見を述べてみましょう」
 ルーシはゆっくりと立ち上がり、背後の壁に掛けられた巻物の紐を解いた。すると、それは羊皮紙にワーレン周辺の地形を詳細に描かれた地図だった。驚くマルスたち。
「グルニアの軍勢はここ、北の山間部に要塞を構えております。主力部隊は騎兵(ソシアルナイト)五千、弓騎兵(ホースメン)五千、重装兵(アーマーナイト)三千、弓兵(アーチャー)三千の約一万六千はおりましょう」
 割り込むようにカインが言った。
「それは先導官の報告で知っている。我らは総勢三万。しかし、レフガンティ中央公路に三千、ワーレン境に三千の守備兵を残し、今は二万四千の兵が動員可能だ。だが、その三割は志願兵の訓練不足ゆえ、実際は八千しか使い物にならないんだ。だから峠道に伏兵を潜ませ、敵がそこを通り抜けるのを待ち、つぶして行くという作戦を取ったんだ」
 カインの言葉に頷くルーシ。彼は更に続けた。
「グルニア軍はご存知のように、大将軍カミュの薫陶を受けた、古今未曾有の強兵揃いです。知謀の将は少なくとも百人は下りません。ましてや、私のような人間は掃いて捨てるほどおります」
 ルーシの言葉に、思わず息をのむマルスたち。ルーシは続けた。
「誠に申し上げにくきことですが、グルニア軍ははなからその作戦は見抜いていたでしょう。損害を受けたとはいえ、士気はそれ程下がってはおりません」
「!」
 マルスたちは声を失った。解放軍は散々に打ちのめされて士気は既に失墜している。だが、敵は結果を見越しての臨戦であり、それ程士気は下がっていないという。ルーシの言葉は的を得ていた。
「先生っ、ならば我々はこれからどうすれば、良いのですか」
 マルスの悲痛にじむ声に、ルーシは口元に微笑みを浮かべて地図の脇に立つ。
「敵は精鋭、更に知謀の士にも優れている。これを破るには裏の裏、さらにその裏をかく策が必然。・・・いいですか。まずは盟主殿を中心とする主力軍は峠を抜け、北の盆地に一気に進軍されるのです。そしてペガサスナイトは海岸沿いに割拠するペラティ海賊団を急襲し、虚をつき一気に殲滅する。グルニア軍はあなた方が今度は慎重に動くと思い込んでいるはずです。北の盆地にあなた方が現れれば、必ずや動揺する」
 驚きと憤りで声を荒げるはアベルだった。
「お言葉だが、我々は敗戦したばかり。時を置かずしての再度の出陣はもちろんだが、敵の策に陥ちた峠越えなど、無謀だ」
 アベルにつづき、シーダとカインも声を上げる。
「海賊団を私一人で倒せなんて・・・ひどい」
「もしもまた伏兵などに遭えば、今度こそ我らは全滅だ。そんな危険なことには乗れないぞ」
 ルーシの策に不満や批判たらたらの三人。
「私は世間知らずの若輩者。大志を抱く歴戦の将軍方に意見出来る立場ではありません。これは私の所見ゆえ、お聞きこぼし下さいますよう」
 ルーシは深く頭を下げてから、席に座り、言葉を発しなかった。
 マルスはしばらく何かを考え込むように眉をひそめて小首を傾げていたが、しばらくたってから顔を上げてルーシを真っ直ぐに見た。
「なるほど。言われてみれば、先生の策はどれも納得できる。成功すれば、大勝は間違いがない。すぐに準備に取りかからせましょう」
 そう強く断言するマルスに愕然となる三人。
「何を言われます王子、無茶です」
「精鋭は大敗を喫したばかりで行軍は当分無理です。かような下策に乗せられてはいけません」
 カインとアベルが間髪入れずに反論する。
「マルス様、お考え直し下さい。これ以上、みんなを苦しめさせたくないです」
 さすがのシーダも、マルスの発言には反対だった。その三人の懸命な諫言によって、マルスの決意は揺らぐ。だが、ルーシは口許をほころばせたまま、じっと瞼を閉じている。
「先生。先生の献策は、やはり・・・」
 その瞬間、ルーシの瞼がゆっくりと開いた。
「私が述べることはありません。これ以上、盟主殿をお引き留めしてはご迷惑。どうぞ、お引き取りを」
「先生、私達の軍に・・・」
「それは出来ません」
 即答だった。マルスたちはあっさりと諦めてしまった。そして表情を曇らせたまま、ルーシの家を出ていった。

 それからというもの、解放軍は依然立ち直りの兆しが見えず、軍全体の士気は失墜していた。これといった策もないまま、いたずらに時を重ね、諸将は苛立ちを募らせていた。
 そんな中、解放軍が擁立しているアカネイア故国の王女ニーナが、小田原評定を重ねている軍議の席に姿を現した。
「ニーナ様っ!」
 突然の王女の姿に諸将たちは驚愕し、平伏する。ニーナはゆっくりと前席に腰掛け、変わらない穏やかな口調で語った。
「パレスを目の前にしての皆様の苦労を思えば、私は心痛に耐えません。しかし、このままですと軍は自ら崩壊し、尊き大志は失われてしまいます。・・・戦いには知恵者の立てる軍略はなくてはならないもの。草花が陽の光を、魚が水を得るように、軍には策がなくてはならないものだと思います。聞けばマルス王子が先日訪ねられた隠士は名うての知恵者だとか。なぜ、かような賢人を迎え、良策を用いようとしないのです」
 そこへハーディンが答える。
「畏れながら申し上げる。ルーシという者、二十歳の若輩者にて、その上、自らを古の大知嚢ヘルメス・ジョアンに比している驕慢で身の程知らずの者。その様な者の言葉など、聞くことさえ論外です」
「ニーナ様。あの男、私達を滅ぼそうとしております。敗戦の傷癒えぬうちに、無謀にも峠越えなどという事を口にしました。おそらく、マケドニアか、グルニアの手先に相違ありません」
 カインが語気を強める。だが、ニーナは言った。
「なぜ、頭からそう決めつけるのです。知恵者も、武の達人も、年齢の上下によって優劣があるのですか。それに、私達を滅ぼそうとするならば、すでに敵に私達の情報を流しているはずではないのですか」
 その言葉にハーディンもカインも口をつぐんだ。
「マルス王子、あなたはどう思われているのですか、その隠士のことを」
 ニーナの隣の席に座していたマルスは、軽く頭を下げて答えた。
「ルーシという方、実に才能に優れた人物と、お見受けいたします」
「ならば、なぜ誠意を持って迎えなかったのです」
「それは・・・・・・」
 さすがのマルスもそれには返す言葉もなかった。
「真の知恵者は、野にあってもなお世情を憂い、胸中に良策を秘めているものです。・・・わかりました。あなた方が迎えられないと言うのであれば、私がその隠士の元に行き、お力を貸していただけるようお願いして参ります」
 その言葉に、諸将は一斉に驚愕の眼差しをニーナに向ける。そして、反対や諫言の声が次々と飛び交う。だが、ニーナの耳にはそんな言葉など届くわけがない。
「ニーナ様をお一人で行かせるわけにはいきません。私も、同行いたします」
 と、マルス。
「王女が行かれるのに、この私が残る理由はない。同行致そう」
 ハーディンも名乗りを上げる。
「ならば、マルス王子にハーディン。今すぐに隠士の元に向かいましょう」
 マルスはともかく、ハーディンは不服をにじませてニーナの護衛についた。
 まるで血なまぐさい戦場とは無縁のようにゆっくりとした田園風景に、馬車の窓から眺めるニーナの表情はとても穏やかだった。
 そして、ルーシの家が見えてくると、その方角からなにやら唄らしき声が風に乗って聞こえてきた。ニーナは思わず馬車を止めさせ、マルスもハーディンも蹄を止める。

河はその流れを変えず
森はその緑を永劫に伝え
星は幾億年の光を注ぎ
鳥は季節を感じて美しく囀る
人はなぜに争うのか
乱世は統一を欲し
統一は乱世を欲し
英雄の偉業はさも一日の如し
大地は滔々と続き
栄えある者も
敗れし者も
すべてを包み込む
知勇も善悪も小事かな

「争いも人の優劣も、英雄の功績も大自然の中では無力・・・なんて高尚な文句の詩なのでしょう。マルス王子、あの方はどなたなのです。是非、お名を・・・」
 ニーナが馬車を降り、詩人の方を向く。
「ルーシ殿です。ニーナ様、あの方こそ、ルーシ殿でございます」
 マルスも慌てて下馬し、口ずさみながら歩を進めるルーシを見た。
「そうですか。あのお方が・・・」
 ニーナは両手を胸に合わせながら、ゆっくりとルーシの前に近づいた。マルスもハーディンもニーナの後につく。
 ルーシはぴたりと詩をやめ、微笑んだ表情でニーナを見た。
「これはこれは・・・淑女様のお耳を汚したようですね」
 ニーナは、ルーシの瞳を真っ直ぐに見つめて言った。
「あなたが隠士ルーシ様ですね。ご高名は耳にしておりました。私の名はニーナ。アカネイアの王女でございます。お会いできて、光栄にございます」
 瞬間、ルーシはひどく驚いた様子で、慌てて跪いた。
「なんと。これは大変失礼いたしました。知らぬ事とはいえ、大変なご無礼を・・・」
 ニーナはルーシの手を取り、立ち上がらせた。

 マルスはルーシのもとに二度目の訪問をすることになった。片田舎のはぐれ者の元などに、よりによって解放軍の象徴であるニーナ王女が随行するとは、異例もいいところである。
 だが、ニーナはそんなことを気にかける様子など見せず、ルーシの説得のため、言葉を開いた。
「ルーシ様、あなた様がお出にならないと、大陸はドルーアの手により、二度と草木の生えない焦土となってしまいます。そうならないためにも、どうか。どうかお願い申し上げます」
 神聖王国の後継が、得体の知れない若僧に頭を下げている。ハーディンの目には、その光景は余りにも異常だった。もしも彼の度量が少しでも狭かったら、有無を言わずにルーシを斬っていただろう。
「私の策は先日、盟主殿に述べました。しかし、私はワーレンの片田舎に住む怠惰な人間。机上の論者に過ぎず、歴戦の将軍方の雄才には到底適いません。王女様、解放軍には知勇に長けた英傑は多々ございましょうに、なぜ宝の玉を捨て、小石を拾おうとなさるのです」
 ルーシの言葉に、マルスが思わず声を上げた。
「先生。今更かと言われるかもしれませんが、やはり先生の述べられた策以外に良策は浮かびませんでした。いたずらに軍議は長引き、軍の士気は下がる一方。これも先生のお言葉を受けなかったからなのです。・・・私たちには先生の知略が必要なのです。どうか、どうか無知な私をお導き下さい」
 懸命に頭をテーブルにこすりつけるマルス。ルーシは苦笑いを浮かべている。
「私のような者に二度も足を運ばれ、畏れ多くもニーナ王女様までお越しになられるとは・・・ご誠意、このルーシ痛感いたじました」
「な、ならばっ!」
「盟主殿。お一つだけ、お伺いしてもよろしいですか」
「何か」
「この戦は、どのような目的を以てなされているのですか。アカネイア故国の再建のためでございますか。コーネリアス王の仇討ちですか」
 その質問に、マルスは暫時瞳を伏せてから、毅然とルーシを見つめて言った。
「本心は確かに仰せの通りです。しかし、今はドルーアの魔手から罪なき多くの民を救うために・・・・・・。正直、私はタリスから立つとき、怖かった。現実から逃げたかった。剣さえも握れなかった。しかし、結局、それは出来なかった。・・・私は苦しむ人々を見捨てることが、どうしても出来ず、決起した。だから今は・・・私はみんなのために、例えこの身が砕けようとも、逃げるわけにはいきません。ドルーアは万民の敵。弱き人々に成り代わり、私がドルーアを討つ」
 ルーシはマルスの屈託のない言葉が胸に突き刺さった。思えば五年前、自分の才能に過信し、ミシェイルの招聘から逃れるために祖国を捨て、ここワーレンに移った。隠遁ではない。逃げてきたのだ。ドルーアという脅威が押し迫っていることを知りつつ、適当に周囲を言いくるめて自分だけ逃げてきたのだ。結局は王女ミネルバの苦しみを救えず、カチュアにも謝れずじまいだった。ワーレンに移ってから、ルーシの心は晴れなかった。カミュの誘いも、断った。思えばあのとき、カミュが言ったこととは、このことだったのだろうか。
 ルーシは椅子を除け、二、三歩後退し、跪いて拝礼した。
「このルーシ、盟主殿のため犬馬の労も厭いませんっ!」
 力強いルーシの言葉に、マルスの表情は大いに嬉々とし、跪くルーシの側により、その手を取った。
「先生・・・・・・」
 ルーシとマルスは熱く見つめ合った。そしてここに、稀世の英雄マルスと、稀世の知将ルーシは主従の契りを結ぶことになった。その様子にニーナは久しぶりに美しい微笑みを満面にたたえ、ハーディンは無言で眉をひそめていた。