あとがき

3ヶ月半近くにわたり連載を続けて来たファイアーエムブレム・紋章の謎の外伝もようやく終了致しました。
まずはご拝読していただいた皆さん、ご支援して頂いた方々に深く御礼申し上げます。

思えば、安易なる構想だった

チュアを主人公にして、もしもマルスに想いを告げたらどうなるか!
なんて、この小説を構想したときは、そんな感じのおもしろ半分だった。
彼女を元々主題にしたかったわけですから、タイトルも彼女が合流する第11章グラ(暗黒戦争編)に設定している。
それで彼女がワーレン(第7章)クリア後に颯爽と飛んできてマルスに出逢うという場面を最初に入れたわけです。
ルーシという人物は本来脇役的存在で、カチュアが敵の密偵と誤解されて彼に斬られそうになるのを、マルスに救われて、それをきっかけにマルスにホの字になるっていう想定上の、「ただのいじめっ子」だったのだ。
無論、3話くらいで終わるはずだったのですが、丁度その頃我が大FANであるDEENが「遠い空で」という楽曲を発表した。
僕はちょうど2話以降の構想に入っていて、このCDを聴いたら、強いインスパイアを受けてしまったというわけだ。
個人的にルーシって言う響きが気に入っていたので(長野五輪で見た国名ベラルーシから採った)、何とか活躍できないかな?と考えた上での「遠い空で」の楽曲。
それで、この楽曲の印象から川辺で空を見ているという場面が過ぎり、ルーシをカチュアの学生時代の友人にでもするか。
と、これまた安易な構想だった。無論、「遠い思い出」のように、3話で終わらなくなったのだ。

思い出話

はこの安易な構想が、この小説を長編にして行くきっかけになってしまったことを気づいたときは遅かった。
ルーシとカチュアを学生時代の友人にするか」という事が、事実上(いや、完全に)この小説の主人公が、架空人物のルーシに移るきっかけになってしまったのである。
無論、「カチュアを主人公にして、もしもマルスに想いを告げたらどうなるか!」などという考えは微塵に散っていった。
ルーシとカチュアが学生時代の友人として、後半でカチュアがルーシのことを好きだったなどという事を書いている割には、序盤で再会したとき気がつかなかった。不自然と言えば不自然かも知れない。
ゆえに、五年の間にルーシを思い切り変貌させないとダメだというわけで、そうこうしているうちに文章が長くなってしまう。
思い出話で小説の大半が取られてしまったので、当初三日だった休日(休戦)も、最初の一日でケリをつけなければならなくなったのだ。

拝啓ミネルバ様

E紋章の謎で、ミネルバというのはマケドニアのお姫様で兄貴の非道に嘆き、妹を虐待されたという哀しい扱いになっている。
一方で、大陸一の竜騎士で武勇抜群。気丈な性格でいわゆる典型的なお姉さまタイプだということだ。
資料とかみても彼女の周囲には色恋沙汰の話はなく、最後は結局妹とともに修道院に行ってしまうと言う本当に悲劇の女性だ。
私はペガサス三姉妹の次にミネルバに感情移入があったので、彼女に関する色恋沙汰の話は取り入れるつもりでは いた。
掲示板・宮廷の中庭でもこぼれ話をしたが、徐々に焦点がカチュアからミネルバへと移っていったのは、個人的趣味と感情移入があったことに否定はしない。しかし、最後の辺りでそのせいかルーシは何か悪党になっている気がする(カチュアとミネルバの心を弄んでいる?)
結局、ルーシの心はミネルバにあったと言うことになるから、後半カチュアの影は完全に薄れてしまった感がある。
しかし、いくら知謀の若者とはいえ15才の少年に悩みを相談して好きになるってのには無理があったな。少なくてもミネルバは気丈で、自分で乗り越えて行くタイプだということだから。
と、言うことでルーシを幼なじみ(遊び相手?)という設定にした。その方が自然かなあと思ったんだが、どうなのかは皆さんの判断にお任せすることにする。

各マップのボス敵

の小説でオリジナルのキャラクタは、主人公ルーシと、ニッケル・ラルム・ペトゥス・カサエルくらいである。
ワーレンの守将カナリスや、ジューコフ等の敵将はゲームに存在する。オリジナルキャラではない事を念のために言っておく。
自分としては、これらド級脇役たちも結構活躍したのではないかと思っている。
第二部英雄戦争編でアリティアのマップの敵ボスであるエイベルをカナリスの弟としたのは、顔グラフィックが同じとんがり顎の兄ちゃん)だったからです(笑)
最後に登場したリュッケは、同じく二部の第三面・「連れ去られた王女」の敵ボスです。

三つの心

章に入ってから、僕個人としての追求テーマの漠然たる答えが出てきているような気がする。
創作ファンタジー小説・レシュカリア古代戦記の中で訴えて行きたい主旨の一部が、ルーシが言っている三つの心と言うものであるのではないかと、自問自答している。
もしも、この三つの心というものが、私たち現代人が忘れかけているものなのだとするならば、思い出してもらいたいと切に願っている。

最後になったが、飽きずに全編を読んで下さった方へ、改めて感謝の言葉を申し上げます。

(98’6/1) 石長直輝 (現:鷹嶺 昊)