第9章 誤 算

「アニーは、あれからずっとユージーンたちと」
 ヴェイグがそう訊ねると、アニーは少しだけ寂しげな微笑みを浮かべながら答える。
「はい……。本当なら、キュリア先生が保健省を采配するはずだったんですけど、キュリア先生の腰は重くて――――。私が、ミルハウストさんの助手を兼ねて、保健省に詰めていました」
「お前ならば、適任じゃないのか」
「そんな……。私なんて全然役になんか立っていません。反って上役の足手まといになっているんじゃないかなって……。色々と焦ってしまうんです」
 悄気たようなアニーの様子を見たヴェイグが、僅かに微笑みを浮かべる。
「な、何がおかしいんですか!」
 思わず、アニーの声が裏返る。
「お前があの頃のままだなって思ったから、少しだけ可笑しくなった」
「え?」
 一瞬だけ、胸が高鳴るアニー。
「悪い意味じゃない。俺が知るお前は、不必要なくらい、遠慮と謙遜で、時々力みすぎるほど一本気で、素直なのに、素直に見えない……そんな、アニー。お前のままだなって」
 一瞬、アニーはヴェイグの言葉を二、三回反芻して考慮した。そして、唇を尖らせてヴェイグに凄む。
「それって、全然悪い意味だと思いますけど、ヴェイグさん?」
 するとヴェイグは驚いたように瞠目し、唸った。
「そう……なのか。んん……ならば――――」
 ヴェイグはやや困惑したような表情を返すと、暫くの間思いを巡らせ、やがて再びアニーを見つめ直す。
「お前は、途轍もなく純粋で、優しい。それでいて時々、危ないほど一途だ」
「…………」
 アニーの頬がぽうっと赤く染まる。その表情に気がつかず、ヴェイグは続ける。
「だが、そんなお前に、きっと……癒される。お前だけが持つ、良さなんだと思う」
 それが、端からしてどんな意味を持つ言葉なのか、ヴェイグは気にしてはいないだろう。ヴェイグ自身も、旅の中でティトレイから教示されてきた、女性に向ける『誉め言葉』の抽出を量っただけに過ぎない。
「…………」
 しかし、突然に無口になってしまうアニーに、ヴェイグは困惑してしまう。
「…………。気に障ってしまったか。すまない――――」
「あ……、どうして、謝るんですか?」
 頬を染め、アニーは静かに狼狽していた。
「いや……その……」
 それは半ばヴェイグのクセというものだった。卑屈というわけではない。ヴェイグが何か失態を演じたというわけではない。クレアからも、よく何故そこで謝るのかと質されることが良くあった。そして、こう返して、呆れられるのだ。
「すまない……」
 アニーはふうとため息をつき、一度瞳を伏せてから、再び広場を行き交う人影たちに視線を移す。
「ヴェイグさんって、すごく意地悪です――――」
 突然の非難に、ヴェイグは大いに慌てた。
 しかし、アニーは推し量ったかのようにヴェイグの狼狽を静めて言う。
「ときどき、勘違いをしてしまいそうなことを、ヴェイグさんは言います…………。それが……」
 次の句を、アニーは呑み込んだ。
「アニー……?」
「…………」
 その横顔に映える大きな瞳が、言いしれず寂しげに揺らいでいるように思った。そして、ヴェイグの胸の中で、何か小さなどよめきが芽生えてゆくのを、朧気ながら感じていた。
「ヴェイグさん」
 再び、アニーの微笑みが見えた時、一瞬あらぬ方向に飛びかけた意識が元に戻った。
「どうした」
 そう訊ねると、アニーは澄みきった青い大気のような表情を向けてヴェイグを見つめる。その深い瞳に、何故か引き込まれてしまいそうな雰囲気を感じる。
「私たちは諦めないでユリスの脅威に打ち克ちました。……だから……諦めちゃ、だめなんですよね」
「……?」
 その言葉に、ヴェイグが思わず声を噤ませる。
「私があの頃のままなら、ヴェイグさんを助けたいって思いも、一緒です」
「……アニー……」
 言うなれば、雨が上がった後に見える、青空のような眩しさ――――。
「ヴェイグさん……。ヴェイグさんがもしキョグエンに行くことを考えているなら、私もお力になります」
「何故、そんなことを…………」
「ヴェイグさんだったら、放っておけないはずです。それに、ヴェイグさんじゃないと、ダメだと思うんです――――」
 それは、アニーが思っている以上に深い意味。
「回復術くらいしか、お役に立てませんけど――――ふふっ」
 そう付け加えて頬を染めるアニー。すると、ヴェイグが思わず、声を張り上げた。
「助かる。お前がいてくれれば、安心だ」
「……ヴェイグさん――――」
 その言葉に、アニーの表情が更に綻んだ。
 アニーを何げに見つめるヴェイグ。しかし、あの頃とは違って、女性としての魅力が格段に増した少女の薫りに、ただ側にいるだけで胸の奥が熱くなって行く。それを自覚すると、すっと視線を逸らした。
 恋人たちに溢れる広場の中にあって、ヴェイグとアニーもまた、同じ色の中にあった。

 アニーを公舎に送り、ヒルダの家に戻ってきたときは、相当夜も更けていた。幽静な空間に、衣擦れすらも煩く感じる。
 すっかり酔いも抜けたヴェイグ。夏とはいえ、さすがにティーシャツ一枚だと寒く感じてくる。普段は寝る時以外、無性に固めた服装をしているので、どうもこうした軽装というのは不慣れである。ニノンの影響ではないが、放っておけば、浮き上がりそうだ。
 ヴェイグは殊の外紳士である。クレアに向ける格別の想いというものは彼女だけに向けられているわけではなく、自然とクレア以外の女性にも他の男性以上の信頼を生むに易かった。
 ゆえにヒルダとしても、クレアをヴェイグと同じ部屋に宛がうことに躊躇いというものはなかったのだ。
「もう……眠っているんだろうな。遅くなってしまったからな……」
 物音を立てて眠っているクレアを起こしてしまうことに強い抵抗があった。クレアと同じ部屋で眠ると言うことに関しては、昔からの慣例のようなものだったが、さすがに他者の家で同室ともなると、若干の途惑いがある。
 このまま広間の隅で眠るのは一向に構わないが、それでは下手をすればクレアに無用な心配を掛けてしまうことになるだろう。いずれにしろ、ヴェイグにとっては避けられない。
 板張りのドアは少なからず軋む。ゆっくりと開けようとすると、反って軋みが長く続き、煩い。
 ヴェイグは息を整えてからドアをぐいと押し込んだ。
 ……きぃ……
 一瞬の軋みだけで、ドアが全開になった。
 しかし、その直後……。ヴェイグの思考を真っ白にさせてしまいそうな衝撃の光景が飛び込んできたのだ。
「ク……クレアッ!」
 思わず声が裏返ってしまう。その声に反応して、濃紺の空間に映える生白きシルエットが、振り向いた。
「あ……ヴェイグ……?」
 慌てるように、クレアは白い布を握り引き寄せた。
 そう、ヴェイグはその一瞬を否が応でも見逃さなかった。いや、見逃せなかった。
 ヴェイグの瞳にしっかりと焼き付いた、クレアの裸体。抱きしめればすぐにでも折れそうな程に華奢ながら、僅かな外の光にも輝く、美しい白瓷の肢体。
「す……すまんっ!」
 瞬間、そっぽを向くヴェイグ。しかし、一度見てしまえば、決して忘れることの出来ない絵画のような美しさ。瞳をぎゅっと閉じても、ヴェイグの瞼の裏に、しっかりと焼き付いてしまっていた。
 居たたまれず、ヴェイグは遂に部屋を飛び出そうと脚に力を入れた、その時だった。
「待って、ヴェイグッ」
 少し恥ずかしそうで玲瓏とした声が逃走しようとするヴェイグを呼び止める。その声に反応して、ヴェイグの足が止まる。
「い……行かなくてもいいから」
「そ……そう言うわけにはいかないだろう」
 かき消えそうな声に返す、あくまで冷静を装うヴェイグ。
「ごめんなさい、ヴェイグ……ちょっと着替えていたの――――」
「いや……まさかお前が着替えているとは思わなかった――――悪いことを、してしまった……」
「そんなことないわ。……あ、ちょっと待ってて――――」
 ヴェイグを止めると、クレアは滑らかな衣擦れの音を控え目に、衣服を纏ってゆく。そんな音すら、ヴェイグの脳裏にあらぬ想像をかき立ててしまう。
「振り向いて良いわ、ヴェイグ」
 少しばかり躊躇いを滲ませたクレアの言葉。ヴェイグはゆっくりと振り返る。
 素朴なシャツに短いパンツ姿のクレアが、寝台に腰掛け、申し訳なさげにヴェイグを見つめていた。それでも、白く細い腕と、形の良い太股が惜しむことなく夜の灯りに照らされている。普段あまり肌を露出しないクレア。
 そして、何よりも大切な存在。それを考えると、クレアの身体を直に見ると言うことが、どれ程ヴェイグにとって一大事なのかが判る。必要以上に胸が高鳴り、更に艶めかしくクレアを映す。
「何故、こんな時間に着替えをしているんだ」
 ヴェイグが訊ねると、クレアはどうしてか僅かに頬を染めたようにして睫を伏せる。
「う、うん……少し、暑かったから――――汗、かいちゃったの…」
 しかし、ここ近辺は総政庁や南門広場の周囲とは違って明らかに涼しい。寝苦しくはなさそうだ。
「そうか――――」
 不審に思ったが、訊ねる範疇を超えてしまいそうな事情ではないかと、ヴェイグは本能的にそう感じていた。
「…………」
 暗くてよく判らなかったが、クレアの腕・脚ともにほんのりと血行の良さを感じさせる色づきがあるように見えた。
「だが、一応――――俺もいることだし……その――――クレア。あまり無防備にはなるな」
 ヴェイグがそう言うと、クレアはふうと長めのため息をついて、ヴェイグに返す。
「どうして? ヴェイグ、家にいる時はそんなこと、言ったことなかったじゃない」
「…………」
「私は時々、ヴェイグの着替えを……見ちゃったこと、あるけど――――ヴェイグは全然気にしなくて……。それに――――ヴェイグも、うっかりしちゃったこと、あるわ」
 そうなのだろうか。全然、記憶にない。いや、むしろそれまでのクレアや家族の生活がヴェイグの一部だった。何気なく過ごしてきた日常を、事細かに憶えているはずもない。
「……その時と、今とでは――――事情が違うじゃないか」
「どういうこと? 何が違うの?」
「ここはスールズの家じゃない。ヒルダと、ミリッツァの家だ」
「そんなこと、関係ないわ。今ここにいるのは、ヴェイグと……私――――よ」
「…………」
「私――――無防備かな。……ううん、もしそうだとすると、きっとヴェイグの前だから、安心して無防備になれるのね――――ヴェイグじゃなかったら……」
 苦しい息遣いと同時に、ヴェイグが感情を抑えて口を開く。
「俺も――――俺も男だってこと……忘れるな」
「…………ヴェイグ?」
 ヴェイグの言葉に、クレアはどきりとなった。
「……やはり――――今日は別の場所で休むことにする。クレア、お前も、もう眠るんだ」
 そう言って、ヴェイグはクレアの表情を確かめる間もなく踵を返す。
 その時だった。
「待って、ヴェイグ!」
 悲痛にも近い、クレアの叫び。無条件にヴェイグの足が止まる。
「行かないで……! お願い――――。私から…………私から、離れないで――――――――!」
「……クレア……」

 “離れないで――――”

 クレアが求める言葉の中でも、それはヴェイグの琴線に強く触れるもの。気丈なクレアが放つそれは、問答無用で、クレアの傍から離さない呪(かしり)。
「お前を守る――――」
 もはや聞き慣れた、陳腐な言葉のよう。どんなに有効な良薬でも、頻繁に用いると効能が薄れてゆくのと同じだ。クレアの表情は切なく、哀しかった。
 すっ――――と、クレアの指がヴェイグの背中をなぞり、やがて胸板に腕が廻された。
「クレア…………」
 背中に伝わるクレアの温もり。それほど大きくない胸の膨らみ。胸元に奔るくすぐったいほどの細い腕の感触。
「ヴェイグ……私――――」
「…………」
 脊髄に触れるクレアの頬の柔らかさ、唇から吐く、その息。
 今、振り返れば間違いなくヴェイグの何かが弾けてしまう気がした。身動げば、ますますその腕が絡みつく。

「ヴェイグ……お願――――い――――」

 哀願というのには、やや語弊がある。しかし、その間にあった何かが、切なさにも似たそんな声色を創っていた。
「クレア……俺は――――」
 胸の鼓動がぴたりと止まる。不思議だった。それまでは嵐のように振動していた胸が凪ぐ。まるで暴風雨を伴う大気の渦、その中心のように、妙なほどの冷静。
 そのまま、身体を捻り、ヴェイグは胸で、クレアの頬を受けとめる。そして、ゆっくりとその華奢な肩に手を回し、そっと引き離す。
「……クレア――――」
 俯いたまま、顔を上げてヴェイグと瞳を合わそうとしないクレア。ヴェイグはもう一度、落ち着いた様子で名を呼ぶと、続けた。
「暑いと思っても、明け方になると急に冷え込んだりする。風邪を引かないように、気をつけるんだ」
 そう言って、ヴェイグはクレアを寝台に導く。
 きゅっと手に力を入れると、非力なクレアの身体は簡単に折れ、ぽすんと寝台に腰が落ちる。
 そのまま、ヴェイグはシーツを引き寄せ、クレアの肩に纏わせる。
「…………」
「お前が眠るまで、傍にいる。お前が、希むなら……いつだって――――」
 ヴェイグの言葉に、クレアは答えない。ただ、平静を装った息遣いが、微妙にぶれている。
「ん……大丈夫。ごめんなさい、ヴェイグ」
 微笑んだ口調。
「良いの。もう……いいの。うん……ひとりで眠れるわ。ありがとう、ヴェイグ」
 ヴェイグに向ける、繕った笑顔。
「そ、そうか。それならば、いい……」
 戸惑い気味に、ヴェイグはゆっくりとクレアの肩に掛けていた手を外す。
「身体……冷やすんじゃないぞ、クレア」
 そう言って、ヴェイグが立ち去ろうとしたその時だった。クレアがすっと顔を上げ、深い色の瞳を真っ直ぐ、ヴェイグに向けて、唇を開いた。
「私……ヴェイグのこと、ずっと好きだから。もう、絶対、離ればなれになりたくないから――――」
 その時、何がクレアにその言葉を言わせたのだろうか。
「当たり前だ。俺は、お前を離さない」
 ヴェイグはそう返すと、クレアの額にかかる金色の柔らかい髪を指でかき上げ、頤を僅かに上に傾けさせると、そっとその唇を重ねる。触れるだけの、接吻。そう……いつものように。
「お休み……クレア――――」
「うん。お休みなさい、ヴェイグ……」
 ヴェイグが部屋を出、ドアを閉じた瞬間に、クレアの瞳から何故か一条の涙粒が伝う。クレアの意志になく、それは勝手に溢れ出していた。
「あれ……どうして? 何故、泣いてるの……?」
 雑然とした仕草で瞼を擦っても、しばらくの間、不可解な涙は止まらなかった。そう、強いて挙げるならば、高ぶった身体の熱を冷ましてゆくかのような、涙――――。
 その夜は、涼しくも妙に湿度が高いような感じがした。

バルカ総政庁・ミルハウスト執務室

 大陽が山麓から顔を見せない早暁から、事実上の国家元首・ミルハウストの職務は始まる。大将軍という立場、そして何よりもカレギア王家やユリスを滅ぼした万民の想いを一身に背負っている彼にとって、安眠の時間は惜しくも捨てざるを得なかった。
 公安府長官・ワルトゥが恭しく礼をする。
「大将軍。早暁一、畏れ入ります」
「構わない。それよりもワルトゥ殿、火急の件か」
 ワルトゥに応接用のソファを勧め、ほぼ同時に二人が腰を落としたと同時に、ワルトゥが言う。
「単刀直入に申し上げる。東都キョグエン公使・羅遒閣下からの上奏があり、東都総督・向侯殿は、この度の騒動において、政府特使の派遣による仲裁を図りたいとのこと。ついて、政府高官の一刻も早い東都下向を要請して参りました」
 ワルトゥの言葉に、ミルハウストは親指で顎を撫で、むうと唸る。
「さしもの向侯総督も手に負えないか――――。それほどに、戀姉妹は度し難いか」
 ミルハウストの嘆息に、ワルトゥは答える。
「戀一族は元より王国に忠を尽くし、その人望は遍く種族を超えて高いこと紛れもなく、実に恐ろしきはただその勇武・鬼謀に非ず、その信望なのです」
 ワルトゥの言葉に、ミルハウストは長嘆する。
「戀唱・戀叶を伐つのはどうとでもなるか。しかし、それでは何の解決にもならない――――。大憲章の――――共和国の大義は竟に無に帰すか」
「大将軍――――」
 ワルトゥが案じる。
「私は大将軍を信じております。王国の遺業は必ず、大将軍の手に引き継がれるであろう事を。――――大将軍、あなたに従うカレギアの忠臣は、なお少なからず」
「ワルトゥ殿。私は戀姉妹の力を得れば、イースタリアは真の意味で共和国……いや、王家の遺志を引き継ぐことが出来るものだと信じている」
「御意」
「そのためには、戀一族を説得できる人物が必要だ。誰か、良い人材を知っているか」
 ミルハウストの問いに、ワルトゥは暫く唸り、やがて答える。
「戀一族は八代に亘りキョグエンにあり、王国に投身した家柄ゆえ、プライドが高く、如何に戀唱・戀叶が遍く慕われているとは言え、こちらとしても、下官を特使とすることは出来ますまい」
「うむ…………やはり、私自ら参らねばならぬか――――」
「お待ちを、大将軍。その前に、まずは東都の情勢を良く調べることが肝要かと。戀一族に非有りと偏見されることは危険です」
「言われる通りだ。……ならば情勢を知るために、誰を行かせる」
「公安府のオスカル・ダジュールを推挙いたします」
「オスカル……おお。王国正規軍の一等中尉だった、あのオスカルか」
「彼の者は篤実な性格ゆえ、適任でございましょう」
「それは良い案。早速、辞令を発そう」
「大将軍、オスカルと共にさる者を遣わせば、万全となりましょう」
「ほう――――。伺おう」
「戀一族に留まらず、カレギアの名族・名士にはその知己を得たいと思わせる程の勇者がいるのです」
 ワルトゥの言葉に、ミルハウストはすぐに閃いた。
「なるほど。ヴェイグたちか」
「ご明察、畏れ入ります」
「ヴェイグたちならば、きっと力になってくれような。早速その旨、伝えよう」
「はっ!」
 ミルハウストの命を承けてワルトゥは颯然と退出していった。