「明日香‥‥ここに手ェついて、脚、広げてくれ」
唇を指で拭いたての明日香に、青大は窓の縁に両手をつき、腰を突き出すような格好になることを指示した。
「え‥‥? あ――――うん‥‥」
それが途轍もなく恥ずかしい格好であることなどさほど真剣に考えず、明日香は言われた通りに、窓の縁に腕を突き立てて上体を支え、腰を突き出す格好で漢字の八の字に脚を広げる。
得体の知れない不安と恥ずかしさに、眦がじわりと熱くなる。
「ねぇ、青大ォ――――。な、なんか――――は、恥ずかしい‥‥んだけど‥‥」
確かに、初めての割には恥ずかしい格好かも知れない。ちらちらと視線を後ろに向ける明日香の不安そうな表情がむしろ青大の理性を崩してゆく。
青大はゆっくりと腰を床に落とすと、仰向けになりながら明日香の脚の間に潜り込んでゆく。
僅かに太ももを閉じるように動かせば、青大の頭を挟み込んでしまう。
青大が両手で明日香の脹脛から膝裏、そして裏腿と掌を這わす。ぴくんと、明日香の綺麗な脚が一瞬、震えた。
星彩に照らされた明日香の脚は、眩暈がしそうな程に綺麗だ。
腿を撫でる青大に、明日香は掠れ声で言う。
「ホントに……私、脚に自信ねェがら……!」
すると青大が返す。
「そんなことねぇって。綺麗な脚じゃ――――」
思い切り舌を出して明日香の太腿を舐めあげる。本当に、無駄にぷにぷにとした贅肉がない、健康的な美脚だ。
「いつまでもこうしていたいわ――――」
そんなことを呟きながら、膝裏から太股の付け根までを執拗に舐める。
「も、もォ……青大って――――ヘンタイだったんだな……」
明日香が蕩けそうな声で小さく笑う。
「お前も……そうじゃろぉ」
僅かに滲む汗と明日香の匂いを胸一杯に吸い込んだ青大は、明日香の中心を覆う、薄い布の付け根を指で掻き分けた。
「あ……やァ――――!」
途端に、青大の鼻腔を覆う熱気。強い明日香の淫臭が青大の脳天から爪先を槍のように貫いた。
光に寄せられる夏の夜の虫、餌にむさぼりつく池の鯉たちのように、青大は本能的に唇と舌を寄せた。
「あ……はァっ!」
明日香がぶるっと身体を一瞬硬直させて思わず指を噛んだ。
青大の唇と舌に流れ込む、熱い液。青大の口元を伝って、それは顎から一滴、床に垂れた。
ちゅる……じゅ――――!
ぷるぷると震え、今にも下半身が崩れそうな明日香。それを理性で抑えるも、自らの脚の付け根から響く淫猥な音に、顔も身体も、心の中も真っ赤になってしまう。
青大が、明日香の真下に潜り込み、天井から滴り落ちる水を受けるように仰向けになって、明日香の泉に貪りついている。
そんな恥ずかしい体勢をしている事を、明日香は理性の間隙で思い、更に羞恥心に弾みをつける。
「やァ……は……青大ォ! は、恥ずか……しぃぅン!」
青大もすっかりとこの可愛らしい恋人が分泌する淫液に中てられ、恍惚と眼が蕩け、頬骨を赤くさせている。
「これが……じゅる……明日香の……味なんや……なぁ!」
殆ど繁みのない綺麗な明日香の中心。熱くひくつき、彼女が息を荒げ、喘ぐ度に、青大の唇に注ぎ込まれる少女の名残。
「なぁ、下見てみぃや明日香……オレを……見てみぃや……」
青大が中てられたように呟くと、明日香はそれに釣られて僅かに視線を落とした。
「あぁ……! やンだァ――――! こな……しょすゥ――――カッコ……はぁぁん」
青大の顔の上に股を開いて伸し掛かるような自らの体勢に、明日香は思わず脚を竦めた。その瞬間、青大の顔がその柔らかい弾力のある太股に挟まれる。
じゅる……ずずっ……ハァ――――ハァ
青大の両腕が明日香の太股に絡みつき、力の抜けそうな明日香を支える。案の定、下半身から力が抜けてきた明日香。へたれ込むことが出来ず、下からしっかりと青大に支えられていた。そして、明日香の秘部には、青大の尖った舌先が突き刺さり、肉襞を剔ろうとしている。
「いやぁ――――! やだァ青大……ハルトぉうん……そこ……そこはダメだってばぁ!」
ぐいぐいと脚をもがき、腰をつんのめるが、青大の腕に絡まれた細く綺麗な脚は、微動だにしない。
「ふぅ……ふんつ……じゅる……」
鼻から下を明日香の淫液でベトベトに濡らしながら、青大は羞恥にもがく明日香の姿に、更に恍惚感を滾らせて止めどない源泉に貪りつく。
「あっ……あはぁ……ハァ……ハァ……」
青大も正直、不慣れな行為。ただ、がむしゃらに恋人の秘部を貪るだけで、話に良く聞く絶頂の意味は知らない。
ただ、明日香ががくりと上体の力を落とし、窓縁に凭れ掛かるのを見て、青大もやっと明日香の脚の付け根から身を離した。ぐいと更に前に腰を動かし、明日香の脇を抱える。
「あっ……!」
ぽすんと、明日香の腰が青大の太腿の上に落ち、目と目が合った。
「よぉ」
「……もぉ……ばがぁ」
にこりと微笑む青大に少しだけ怒りを向けると、すぐに唇を重ねて下を絡める。
「その……いった?」
「は?」
唐突な言葉に、明日香が一瞬きょとんとする。
「じゃけぇ……その――――オレの……あれで……」
「…………」
明日香が眼をぱちくりとさせるが、思考知識を辿り、その意味を察知する。
「し……知らねぇべよ、そ、そんだなごど!」
顔を背けて唇を尖らかす。
「オレ……よくわかんねぇから……」
青大が言うと、明日香もすぐに青大の目を見つめる。
「私だって……分かるわけないじゃん……」
「…………」
「……でも――――」
「でも?」
明日香は戸惑うように青大を何度も一瞥すると、ぐいと胸を青大の胸板に押しつけてきて、背中に腕を絡ませ、耳元に囁いた。
「青大がチョーヘンタイだってことは分かった……かな?」
ここに来ても子供のような無邪気さで笑う明日香に、再び青大の情欲に火がついた。
「明日香……オレ――――もう……」
明日香に躊躇いながらもせがむような眼差しを向ける青大。
「……うん。私も……でも――――ここじゃ、きつい……かな?」
「あぁ。向こうに行こう――――」
青大はおもむろに明日香の背中に腕を廻すと、キスをしながら言った。
「しがみつけぇや」
「……え? あ、うん……」
言われる通りに、明日香はそのまま両脚を青大の腰に廻す。
「っ……と、よっと!」
青大は両脚を屈めると、なんと一気に明日香を抱えるように立ち上がる。
「きゃっ!」
ずんとした感覚で一気に高みに持ち上がり、明日香は小さな悲鳴を上げた。
「なんじゃ。お前、軽いわ」
青大がそう言うと、明日香は眼を細めて青大の首に齧りつく。
「重いと思った?」
「痩せ過ぎなくらいじゃ」
などと戯けて返す。
「ばか」
「痛ぇって!」
じゃれ合いながらも、青大は明日香を抱えながら、敷かれた布団に足を運び、ゆっくりと明日香を下ろし、仰向けに寝かせた。
「…………」
「…………」
星明りにも遠く、互いの顔が闇に見慣れてやっと分かる程度。
「もう、浴衣がぐちゃぐちゃだよぉ……」
「終わったら、替えりゃあええ」
「そうだね……」
明日香の上に覆い被さるように、青大は肘と膝で全身を支える。
「一緒に――――温泉入ろ?」
「ああ……」
返事もそこそこに、するりと青大の四肢から浴衣が滑り落ち、明日香もまた、浴衣が敷布代わりになっていた。
微笑みながら、二人とも最後の一枚を脱ぐ。もぞもぞという身体の動きに、何故か照れ笑いをしてしまう。
青大が横からシーツを一枚掴み寄せる。それを、自らの背中から覆った。
「明日香……」
青大が両手で優しく明日香の髪を撫でる。そして、頬、鼻筋、唇と、指先で慈しむように触れる。
「怖いか?」
すると、明日香は微笑みながら小さく首を振る。
「青大の顔、見でっがら……怖くないよ?」
「痛かったら、止めるけェ――――無理、すんなや」
「うん……大丈夫……」
青大がゆっくりと腰を落とす。明日香もまた、ゆっくりと両脚を広げてゆく。
渾身の血が滾る青大の自身が、熱い泉を探り当てる。
「青大……?」
いよいよというとき、明日香が口を開いた。
「ん?」
「大好き……」
熱の籠もったその一言に、青大の芯がずんと雷を受けた。
「俺もじゃ……明日香――――大好きじゃ」
「うん……んっ……」
満面の安堵の微笑みを浮かべる明日香の唇を塞ぎ、舌を絡め、唾液を吸い合う二人。
そして、そのまま……
「んンッ! んん――――――――!!」
「くっ……!」
青大の芯に奔った雷が、そのまま明日香の中を伝った瞬間だった。
得も言われぬ熱さと快感が、激しい痙攣となって二人の思考を止めてしまうのだ。
激しいディープキスさえも苦しいように、二人は唾液にまみれた顔を離した瞬間、絶叫仕掛ける。
「あぁ――――――――ハルトォ!」
「あす……明日香ァ――――!」
バチバチに激しい電撃を喰らったかのように、互いの筋肉の硬直が伝わる。しがみつく青大の背中に、明日香の爪が立つ。それは、無意識のこと。
「痛い……か?」
「ん……んん……だ……大丈夫……だから」
無理に微笑みを作ろうとする明日香。青大は当然、止まった。
「ゆっくり……するけぇ――――苦しそうやったら、止める……」
青大の言葉に、快感に朦朧とする明日香が首を弱々しげに振る。
「止めないで……青大と――――やっと……やっとひとつになれたんだもん……続けて欲しいから……」
そう言いながら、脚を青大の腰に絡めてくる。
「明日香……」
それ以上は野暮だった。
「ぐっ……うぅぅぅっ……」
青大はゆっくりと、さも亀のようにゆっくりと、腰を深く沈めてゆく。そのたびに、苦痛を堪える明日香の表情が気になるが、それ以上に進み入るたびに切なげに喘ぎ、仰け反る明日香の上体と、自身に絡みつく明日香の中が気持ちよすぎて仕方がなかった。
「……入った――――明日香の奥に……」
「あぁ……うん……わかる……よ? 青大の……感じて……あぁん!」
少し動くと、中が捩れる。青大と繋がっているところは最早明日香の快楽の全源だ。
「ねぇ……やっぱり、しばらくこうしてたいな――――」
ぎゅっと、震えやや硬直した腕で青大の背中を強く抱きしめてくる。
「あぁ――――」
青大も分かっていた。明日香は破瓜の痛みをぐっと堪えている。これ以上は、ただ苦痛のみだって事を、気付かないわけがなかった。
繋がったまま、青大も明日香を抱きしめる。下手に動くと激しい刺激を与えてしまう。かと言って力を抜けば、重い身体で明日香を潰してしまう。膝と肘で、普段あまり使わない筋肉を青大は使っていた。
「……青大、下になって?」
「え?」
明日香はそれを感じたのか、微笑みを浮かべて言った。
「その体勢、疲れるだろ。私が上になるよ」
正直助かった。そして繋がったまま、転がるように身を返し、そのまま青大は下に、明日香が上になる。
「青大の上に……ゴロンッ」
快感に時折甘い声を出しながら、明日香は微笑みを絶やさない。彼女の伸し掛かる体重が実に心地よい。青大は思った。
「ほんま、このままずっと居てぇわ」
「青大……」
明日香の髪を撫でながら、一つになっている実感に浸る。
「幸せって、こんな感じなんじゃな……」
「うん……ちょっと……た…かったけど」
明日香の途切れた声に、慌てる青大。
「あ、やっぱ!」
身体を引こうとした。今度は明日香がしがみつく。
「やだッ、離れないで……」
「明日香……」
「離れ……たくないよ――――」
「…………」
切なげな声に、青大もまた愛おしさに拍車がかかる。無性にわき起こる獣欲を、それでも青大はぎりぎりの理性で抑えられた。明日香は初めてのことだ。そして青大自身も初めてのことだった。
ひとつに繋がった。それが何よりも大きな出来事だった。
繋がったまま、緊張で疲れたのか、明日香は眠りの淵に落ちていく。
「…………」
青大が苦笑混じりに小さく笑うと、ゆっくりと腰を引いた。
「ん……ぁ……」
ぷるぷると明日香の身体が震え、寝息の喘ぎ声が漏れたが、起きなかった。
(朝方になったら、行こうな)
明日香の唇と胸にキスをすると、青大も横になった。腕枕に安眠する明日香。きっと、朝方この腕はぷらぷらになっているだろう。青大はそう思いながら眠りについた。