Produce notes


世界観~テイルズ オブ デスティニーから受けたもの

ナムコのロールプレイングゲーム、テイルズ オブ デスティニーに強烈なインスパイアを受け、改めてロールプレイングというゲーム世界の“ストーリー性”や“人間味”というものを感じた僕は、この創作ロールプレイングゲームの原作であったレシュカリア古代戦記というものの“ストーリー”・“人間味”というものを、再び省みる必要があると痛感した。
それまで僕はロールプレイングゲームと言えば、ドラゴンクエスト一辺倒だったが、テイルズ オブ デスティニーの世界の奥深さは、ドラゴンクエストとはまた違う、複雑で魅力的で、かつどこか切ない雰囲気を感じたわけである。
単純に言えば、テイルズのストーリー性は、“基本的”だと思うが、話を進めていっても、決して飽きさせない。他のRPGではある程度話が進むと、大体先行きが見通せてしまうが、テイルズは違う。そろそろ話が見えてきたなと思ったところで、一転急展開させてくれる。僕自身、忘れかけていた何かを、感じてやまない作品だ。特に、物語の最後は言葉では表現できないくらい感動的で、そう、強いて言えば、現代人に警鐘を鳴らすような・・・。とかく、レシュカリア古代戦記の創作に当たって、テイルズから再認識させられる部分はとても大きい。

テーマ~真の友情・愛

現代にあって人間同士の交流というものはどうなっているのだろうか。友情や愛情という概念は、ただ表面上だけのものにはなってはいやしないだろうか。
心の中にしまい忘れてしまった本当の優しい心は、いつか思い出して欲しいと思う。長引く不況、ただ多忙な生活。私達の本当の心は世情に押し込まれてしまったのだろうか。
アルファたちは純粋な心を持つ。正直言って、現代人の一人である僕が、ただ「純粋」と言っても、おそらく一笑に伏されてしまうだろう。
テイルズ オブ デスティニーは訴えていた。僕自身解釈したもの。それは「真の友情・愛とは何なのだろうか」ということだ。
実はこの小説のテーマは、まさしく、「真実の友情・愛」と言うことだった。実に曖昧で解りにくいテーマである。僕自身もよく、解らない。しかし、何となく理想論に近い形で、浮かび上がった答えの一つ。それは「心から助け合う事が出来ること」。愛とは「枠にはまるものじゃない」。これも何とも漠然としている。レシュカリア古代戦記は、僕自身の曖昧で漠然とした理想の現れかも知れない。

アルファ・シュリス・カムル~純朴なる主人公たち

この小説のメインステージは、レシュカリアという広大な大陸である。
主人公アルファは、ローアンという国のトルキステル村の生まれで、剣の師であるレグテチスの誘いでレシュカリアに旅立つことになるのだが、決断まで大いに悩むことになる。
現段階では戦いもなく、平和な村が舞台となっているが、本編であるレシュカリアに舞台が移るのは、そう遠くない。
彼らは普通の海外旅行とは違って、ある意味ではレシュカリアに骨を埋める覚悟で行かねばならないわけである。今まで何気なしに見過ごしていたものが、大きく見える。
人は別れが近くなると、急に愛おしくなったりする。
アルファは心優しき少年。生まれた村を愛し、両親兄妹はもとより、故郷の人間全てが大好きなのだ。故に自分の夢と、愛すべき故郷捨て難くと言う葛藤が展開される。
カムルやシュリスは、アルファの真の親友である。本当の友人とは、何なのだろうか。私の理想像は、現実的に見て、実に甘ったれたものかも知れないが、その葛藤に悩むアルファを励ますカムルの姿は、とても格好良く描きたいと思っていた。
彼らは表面上で仲がいいわけではない。心の底から繋がり合った、本当の仲良さである。私が伝えたいのは、アルファとカムルの、男の絆というもので、やはり一人一人が保身的になった現代社会において、真の親友像というものをここで提示してみたかった。
彼らはいずれ、レシュカリアの数多くの難関にぶつかり、生死を共にすることになるのだが、“人間の美しさ”の本当の意味は、外見ではないと言うことだと思う。
三枚目であるカムルは、私達共通で、理想的な親友像なのであると思っている。

(97年9月3日)