■職務経歴
| 労働安全衛生法 (災害状況の調査) 第百条の二 厚生労働大臣は、労働災害の防止に資 する施策を推進するため、業務に起因して作業従事者 が負傷し、疾病にかかり、又は死亡した災害の発生状 況に係る情報その他の必要な事項について調査を行う ことができる。 2 厚生労働大臣は、前項の調査のために必要なとき は、厚生労働省令で定めるところにより、事業を行う者 及び作業従事者に対し、必要な事項を報告させること ができる。 3 前項の厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で 定めるところにより、都道府県労働局長に委任するこ とができる。 4 前項の規定により都道府県労働局長に委任された 権限は、厚生労働省令で定めるところにより、労働 基 準監督署長に委任することができる。 |
装置に巻き込まれ死亡労働災害の旨連絡があり、現場に災害調査に向かう。被災者の方は、病院に。現場は保存され、作業は急遽休止されで、工場内は、静まり返っています。 装置は、溶かしたアルミをロボットアームですくい上げて、流し込むが、このとき左右からの成形鋳型によりはさみつけて、所定の部品を製造する。 ここです 案内があった工場の担当者が示した装置を覗くと、成形鋳型にヘルメットがこびりついているのが見えた。黄色いヘルメットが。 頭を挟まれたのか。ヘルメットがこのような状態ということは、と思ったときに思考が停止した。 これ以上考えることは、この場ではやめよう 心に蓋をして、職務を続けなければならない。 |
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第一発見者は派遣労働の方だという。3交代勤務で夜勤明けですが、状況を説明するために、工場に残ってくれていました。 工場は、主要通路があり、当該装置には、枝通路がありました。 このとき、第一発見者は、主要通路に立ち、枝通路の端部にある当該装置が見通せる位置を示しました。 「ここで、最初に通りかかったときに、何かしているのかな、と思いましたが、そのまま通り過ぎました」 「だいぶんたってから、この場所を通りがかったときに、気になったので、覗いてみると、さっきと同じ姿勢で装置にもたれかかっています。どうしたのかな、と思って近づきました。」 枝通路を進んで、第一発見者は 「ここで、わかりました」 といって、第一発見の模様を説明した。 第一発見者の表情、夜勤明けの疲れがあったはずですし、なによりも、心の中のざわざわとした思いがこちらに伝わってきました。あってはならない恐ろしい状況を目撃したのですから。 その思いは、私にも伝わりました。 「気持ちはわかります」 声かけできていれば、第一発見者の方は随分とお気持ちが和らいだと、今、思います。当時、自分は、自分のことだけを考えていて、自分に対する「大変なんだ」という思いだけでした。 |
| 早く原因を究明して、同種災害が出ないように対策を指導しなければならない。被害にあわれた方の「被害救済」につながるよう、猶予がない、という思いもありました。 自分も装置の中に入り、どうしてここに入る必然があったのか、等を見分しました。 このとき、工場の担当者の方から 「ご家族の方がお見えになりました」 と連絡がありました。 ご遺族の方が現場をみたいとおっしゃっておられるのか。このように凄惨な災害現場。ご遺族の方には、迅速な労災補償の事務処理などで対応させていただくにしても、発生した事故に関しては、言葉も見つからない。 別の機会にお会いすることにして、調査は一時休止して、その後すぐに再開することにしました。 一時撤収。 あのとき、お声を掛けたらよかったのか、ずっと心に引っかかっています。 ところで、工場の担当は、直接対応されたわけですが、つらい業務です。 、 |
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| 家では、もちろん職場での出来事は一言もしゃべらないのですが、自分は「正直者」で顔に出ているようです。 夕食、黙りこくってたべながら、ときどき、がりっとかんだりする。自分では、気づかれていないと思っていますが、たまりかねて「なんで、そんな顔してごはん食べているの」と怒られ、はっと気づくわけです。「顔がゆがんでいる」のだ、と。 家でもそういう状況で、職場ではもっと顔がゆがんでいたと思います。「お前はいつも暗い顔している」と上司から時々指摘されていました。 思い出すことが多いです。労働者を雇用している小規模事業場の経営者の労働災害で、特別加入されていない事例、喪服の奥さんに対して、労災保険の適用対象にならないとつげたときに、一言もなくそのまま帰えられましたが、こういう仕事なんだと自分に言い聞かせました。 随分と暗い顔していましたが、メンタルヘルスになることなく、定年退職を迎えました。退職後は、日時が経過して、やや明るい顔で毎日を過ごしています。 営業トークも上達。経験を生かして、つらい業務の工場担当者にお声かけできるようになっています。 |
| (申告) 第九十七条 作業従事者は、事業場にこの法律又は これに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、 その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長 又労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置 をとるように求めることができる。 2 事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働 者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしては ならな い。 |
まったく初めてその事業場へ行くわけです。どういう方が担当なのか、事前にはわからない 労働基準監督署は、単独行動が基本で、一人で事業場にお伺いします。バディがいるわけではない。 「申告」は、そもそもその事業場に課題があり、そして、解決を求められています。第一回目であろうと「行ってこいや」です。 |
当該工場は、印象としては「山の中にある」ぽつんと一軒家的な存在でした。工場と事務所があり、当時、セキュリティは気にしていない時代で、正門からは、流れ的には工場、事務所の順で、工場をのぞき込んでいると、おっさんが飛んできました 「何しとるんだ。」 その迫力にまずはビビりました 「こっちに来い」 と、事務所に案内というか、ひきずりこまれるというか、連れていかれました。 「失礼な」 と言いおいて、それでも、やや敬意を払ってくれ、「知ってますよ。臨検する権限があるということは。それでも常識ではないですか。挨拶ぐらいしろよ。」 |
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| いったいどうなるのか。このようなことになってしまって。大変なところに就職したな、と不安で「どうしたらよいか」と考える始末で、「申告監督」ができるのかどうか、ぶっとんだ事態です。 どうしようもないし、逃げ出すというもおかしい、じっと黙っていたところ、事態が急変しました。 冷静に見てみますと、連れ込まれたのは、事務所で、私は、今、事業所長の机のすぐわきに立っている。事業所長は机を挟んで立ち上がって怒鳴っている。事業場の事務員は総立ちになって、全員が立ち上がってこちらを見てる。 このとき、事業所長はふっと我に返ったのだと思います。急に黙ってしまいました。 |
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| 「俺は投書された」「俺は嫌われている」ことに気づいたようです。 このような隔離されたような事務所で、こういう調子で毎日パワハラの行動をしていたのだと思います。 その後、がらっと態度がかわってしまって、何も言っていないのに「改善」が提案されました。しかも、「饅頭いかがですか。いつもあるものではないのですが、今日はたまたま頂き物がありましてね」とかいって、ひとつ差し出されましたが、丁寧に辞退しました。 驚くべきは、この法律の存在、仕組みです。事業場の情報が労基署に駄々漏れ、共有されていることに加えて、いつでも労基署の職員が臨検に来るという。特に何をしゃべってものではありませんが、ただ、その存在だけで事案が解決しました。 大声で怒鳴られても、事案は解決します。 ただ、定年までこの仕事に耐えられるかどうかだったわけですが、代償は払ったと思いますが、なんとか乗り切れました |
| 第九十二条 労働基準監督官は、この法律の規定に 違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法 律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を 行なう。 |
新入社員で間もないころ、第一課長が労働者死傷病報告の束をめくっている。当時は、災害が多くて、報告書も分厚い束になっていました。その中から2枚を抜き出して、1枚を私に手渡しました。 「書類送検する」 というのですが、私に1件「やれ」という。 ほとんど素人同然ですが、位置づけは労働基準監督官ですから、有無を言わせずです。 送検とは何、調書とは何と右往左往しましたが、書庫で記録をあさり、見よう見まねで、早々と書類らしいものを仕上げました。 とにかく形ばかりのもので、これを指示に従い検察庁にもっていったところ、何と、受理されました。 「送検とは、こういうものなの」 と思っていたところ、翌日、電話があり、検事から呼び出されました。 |
| お伺いした部屋は、でっかい検事の机があって、その横に検察事務官。私は、取り調べを受ける位置に座りました。 えっつと思う間もなく検事から言葉が。 「きみは、今まで何回やったのだ」 「いや 初めてです」正直に答えました 「何 初めて」 「では仕方がないな」」 このとき、私の仕事が最低なんだ、ということがわかりました。 驚いたのは、検事の言葉でした。 これをはじめとしてその30数年にわたり、検事に呼ばれますが、このようなことは最初で最後でした。 「よし、俺がやってやる」 というのです。 私にかわって捜査をやってやるということで、この後、何回も経験するのですが、送検した書類を投げつけられるほどの勢いで叱責され、捜査の不適を言われるのが「通常」なのですが、この時だけ違っていました。 職業人生の最初で躓かなかったのは、この時の検事のご好意のおかげです。 |
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私をひそかに助けてくれる人がいる。手相に表れている、などと信じていたころもありましたが、何かに頼らなければ、到底乗り切れないような業務もあるとは思います。 第一課長は怒っていました。 私の総研事案は「起訴」、一方一課長の事案は「不起訴」です。なんでや、というわけです。検事からは捜査の不適箇所をさんざん指摘され、絞りまくられた挙句、これです。 もちろん検事が「やってやる」といったことは、一言も口にはしていません。 すべて、実力のナセルところで、歴然としています |
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| その後何年も経過したときに、特別司法監督官を拝命しました。検事との連絡調整をする担当です。 |
| (労働基準監督官の権限) 第九十一条 労働基準監督官は、この法律を施行す るため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、 関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査 し、若しくは作業環境測定を行い、又は検査に必要な 限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収 去することができる。 |
定年退職後に、「災害防止団体」に再就職し、安全管理士、衛生管理士として、安全教育や事業場のうかがって「安全指導」を行いましたが、民間事業場の出身者である労働安全コンサルタントと決定的に違うところは、「臨検して、まったく初対面の方とトークして、情報をまとめて安全指導を文書で行う」という事務処理能力のうち、「初対面の方と話ができる」にあると、自分は考えています。 |
新入社員のころ、先輩が「1回だけ教えてやる」といって、建設現場に連れて行ってくれましたが、そこは足場が組まれ、躯体はまだ中途でしたが、現場に表示されている看板を見て、その先輩は、「是正勧告書」をその場で作成しだしました。 事業場の名称、住所、代表者の名前などが表示されていて、それを様式に写し取り、是正勧告の欄は、斜め線、ということで、これを何枚も作成しました。 「何やってるんだ。水増しではないか。誰とも話をしないで、件数だけを稼いで」 そもそも、臨検の権限で、勝手に建設現場に入れて、一方、「違反だ」と指摘されるのが嫌だから。常に安全に心がけるという法令の仕組みをその都度、周知させるためにも、直接「会う、話をする」は必須で、これを省略するのであれば、存在意義がないともいえるもので、 しかし、「おかしい」 とは一言も言えませんでした。 その代わり、顔に出ていたと思います。 正直なもので、すぐに、顔に表れてしまって、そんなことも多いです。 その先輩とは一緒に出掛けたくないと思いました。 |
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新入社員の最初のころは、「賃金構造基本統計調査」というものをやりました。社会保険労務士の先生についていって事業場で賃金に関する統計調査を行うという。 あるとき、この先生が「わしは、この事業場へはよういかん」と言いました。 第一課長は、「君なら一人で大丈夫や」といい、私は、一人でその尾事業場に行きました。 事業場は、行ってみて、ドアを開けると真赤な絨毯。お兄さんが何人もいる。 なんだ、ここはと思う前に、所属と要件を告げていました。自分でもびっくりするような対応力。 すると、何らかの合図で、兄さん方がさっと別部屋部に移動し、そこには、お姉さん一人と私という構成になりました。 もちろん、すぐ隣の部屋には先ほどの兄さんが息をひそめていることは「気配」でわかります。 圧迫感で「叫び」そうな気分を抑え込みました。姉さんは、私から書類を受け取り、統計内容を書き込みしてくれました。 「さお、もう帰り」 といって、書類を私に手渡しして、背中を押してくれました。 助けられたのだ、という気持ちでした。 職場に返ると、第一課長が言うのです。 「ほらな。君やったらできると思っていた」と。 不測の事態になったときに、ここは誰も責任取らないよな、と思った次第です。何とも得体のしれない恐ろしさと常に隣り合わせ、そして自己責任で、何十年も鍛え上げた臨検監督の力はいまも(多分)役立っています。やくだっているはずと思いたいところです。 |